『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』のダニエル・ブリュール 「僕でもジモは信用しない」

 現在ディズニープラスで独占配信中の『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』。4月2日に配信された第3話では、『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』の戦犯ヘルムート・ジモの協力を求め、脱獄を手助けしたサム・ウィルソンとバッキー・バーンズが彼とともに犯罪都市マドリプールに潜入した。本シリーズでは、ようやく洗脳状態から解放され、本来の自分自身を取り戻したバッキーが、もう一人の自分が過去に犯した罪の贖罪が第1話で描かれていた。

 そして当時『シビル・ウォー』で彼にコードを読み上げ、再び殺戮マシーンにさせた張本人であるジモ。そんな彼を信用することなどもってのほかと思いきや、それはサムの意見であり洗脳された当の本人のバッキーが、彼を脱獄させるアイデアを思いつくという興味深い展開になった。その後も、行動をともにしながら彼らの仲間として協力的な姿勢を見せるジモだが、サムもバッキーも、そして我々視聴者も本当に彼を信じていいのか、未だにわからない。しかし、ジモを演じるダニエル・ブリュールはThe Hollywood Reporterのインタビューにて、「僕は絶対に信用しません」と語っている。

「いいえ、絶対信用しません。誰が何を考えているのか読むことは難しいし、何を企んでいるのかもわからない……その曖昧さが常に楽しいと思っています。なので、そうですね、本当に彼のことを信用しないほうがいいです。しかし、本シリーズを通してジモが邪悪な悪者ではなく、『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』で垣間見た以上の彼の深みを知ることができると思います。なので、もし視聴者がジモに共感しはじめ、ショーが終わる頃には皆“ジモ推し”になっていたとしても、理解できますね」

 確かに、我々は第3話でジモのことをもっと知ることができた。例えば今回彼が“バロン・ジモ”と呼ばれたように、彼が男爵であり、今は無きソコヴィアの元王族だったことが明かされた。あのウルトロンとの戦いで家族を失い、アベンジャーズを逆恨みした背景はどこかワンダ・マキシモフを彷彿とさせる。しかし、そんな悲壮感を感じさせないような軽口、今にも倒れそうな執事との掛け合いや気品、サムとぴったりの音楽の相性、ユーモアのセンス、パーティで楽しそうに(真顔で)ちょっと踊っちゃう感じなど。彼はこの1話だけで随分MCUファンを虜にしたのではないだろうか。しかも何より一度はアベンジャーズの分裂を目論んだ彼だったが、実は血清作りのために雇われたヒドラの科学者を長年追い続けていたことが今回明かされた。血清が世に出たら超人軍団が生まれることを危惧していたのだ。彼にとってウィンター・ソルジャー計画は終わったものだったが、再びそれが起きてしまいそうになった今、自分のやり残したことを片付けると言ってサムとバッキーに協力するようになる。もう、この時点でなんだか“本当は悪い奴じゃない”感がすごい。

 しかし、ダニエル・ブリュールはそんなジモでも信用しないそうだ。だがたとえ、ジモが今後サムとバッキーを裏切ることになっても、なんだかんだ許せてしまいそうな空気感が出てきている。なぜならすでに、MCUファンは嘘つきだけどチャーミングな王族男子に慣れているからだ。散々(しかも酷いレベルで)ソーや周囲の人物を裏切り続けてきた、あのロキでさえ我々はもうその魅力に抗うことはできず、今やMCUの中で最も人気の高いキャラクターである(彼が主人公のオリジナルシリーズ『ロキ』の配信6月に控えている)。そういった意味で、今後ジモがある意味ロキ的なポジションで活躍していくこともあったりして。

■アナイス(ANAIS)
映画ライター。幼少期はQueenを聞きながら化石掘りをして過ごした、恐竜とポップカルチャーをこよなく愛するナードなミックス。レビューやコラム、インタビュー記事を執筆する。バキ翼もう後半戦なのが受け入れ難い。InstagramTwitter

■配信情報
ディズニープラスオリジナルドラマシリーズ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』
ディズニープラスにて独占配信中
出演:アンソニー・マッキー、セバスチャン・スタン、ダニエル・ブリュール
監督:カリ・スコグランド
脚本:マルコム・スペルマン
(c)2021 Marvel

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