『天国と地獄』の今後の展開を左右する!? 柄本佑が“便利屋りっくん”で担う役割

『天国と地獄』柄本佑が今後の展開を左右?

 先述した“入れ替わり”を知る場面は、本作において非常に重要なものだ。受け手である柄本の演技の塩梅によっては、物語のリアリティも、喜劇と悲劇の比重も変わってしまう。しかしなにも、このシーンでの演技ばかりががカギになっていたわけではない。これをすんなり成立させるために、望月と陸とのそれまでの関係性を、多いとはいえないシーンのなかでいかに見せるかが重要であったように思う。そこでは陸の持つ“性質”も知ることができるわけだ。この一大事に巻き込まれる前までに、柄本が陸の飄々とした人物像を立ち上げていたからこそ、彼が対峙するその後の展開を私たちは納得して受け入れられたのである。

 現在、“陸と日高(身体は望月=綾瀬)”、“陸と望月(身体は日高=高橋)”の組み合わせがぐるぐると展開中。“男女の関係”と“男同士のバディもの”とが交錯し、こちらの頭もぐるぐるしてくる。綾瀬、高橋の中身が入れ替わった演技の成立には、その受け手である柄本の演技の柔軟性が大きく貢献していることは間違いないだろう。演技とは、上手いアクション(発信)だけでなく、上手いリアクション(受信)があってこそのものなのだ。

 望月のため、単身危険も冒しつつある陸。彼は同じ右腕である八巻以上に“アナザーストーリー”を展開させている。柄本を主演に「スピンオフ」をやったら面白そう。とまれ、警察である八巻の陰での活躍には限界がある。これからの展開は、“便利屋りっくん”にかかっていそうだ。

■折田侑駿
1990年生まれ。文筆家。主な守備範囲は、映画、演劇、俳優、服飾、酒場など。最も好きな監督は増村保造。Twitter

■放送情報
日曜劇場『天国と地獄 ~サイコな2人~』
TBS系にて、 毎週日曜21:00~21:54放送
出演:綾瀬はるか、高橋一生、柄本佑、溝端淳平、中村ゆり、迫田孝也、林泰文、野間口徹、吉見一豊、馬場徹、谷恭輔、岸井ゆきの、木場勝己、北村一輝
脚本:森下佳子
編成・プロデュース:渡瀬暁彦
プロデュース:中島啓介
演出:平川雄一朗、青山貴洋、松木彩
製作著作:TBS
(c)TBS

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