『恋あた』が示した恋愛ドラマの新たな形 中村倫也×仲野太賀が演じた2人の男性像を考える

『恋あた』が示した恋愛ドラマの新たな形

 仕事で自信をなくす里保を励まし、お仕事のご褒美でネックレスをプレゼントしてイチャコラする浅羽。等身大のデートが居心地よくて、どんなときにも側にいてくれる誠の温もりを理解して受け入れる樹木。そんな風に里保、誠の「好き側」の2人だけでなく、浅羽と樹木という「好かれる側」の2人もちゃんと交際に満足している様子が丁寧に描かれていたのが好印象だった。

 それなのにも関わらず里保がまだ好きなのに浅羽をフって、カップルを解消させたことで、浅羽→樹木という本来もっとも可能性がないはずの矢印が生みだされた。この展開、正直言って無理があるように思える。全然リアルじゃない。第9話のラストでは視聴者の大半が「どう考えても、まこっちゃんだろう!」と画面に向かって叫んだはず。それは、浅羽の言動における動機が不十分であるが故に覚えた違和感と、逆に一貫性のある姿勢を見せてきた誠を比べてみて、後者の方が圧倒的に納得できるからだ。

 大体、結婚を視野に入れていた元カノと復縁した時点でそれは真剣交際そのものではないのか? そして里保さんが以前別れたとき、理由も聞かずにあっさりと承諾したことを後悔しているからこそ、今回浅羽はちゃんと困惑した気持ちであることを表した。ほら、浅羽はちゃんと里保のことが好きなのだ。しかし、気がつけば里保の言う通り樹木を誘い出す。それも、「よく分からない自分の恋心を確かめるため」に。自分のことを慕ってくれている誠が、彼女と交際中であることを知っていて、彼に隠れてデートに行くってどうなの?

 そんな脈絡のない行動が、結果「やはり樹木のことが好きではなかった」ことに気づくために必要だったのであれば、納得が少しいく。そういうこと、現実でもある。実際デートを重ねた結果、樹木とは合わないし(実際そう言っていた)、里保の方が自分に合っていたと思ったのではないだろうか。それを里保に伝えて、彼女から離した手を再び彼が握れば良かった。そうすれば、「やはりこのドラマはリアリティ指向だったんだ!」となるのに、なぜか真逆の方向に走り出してしまった浅羽。まるで道化のように、突然キャラがブレはじめて収拾がつかなさそうになっている。しかし、この道化っぷりに意図があると考えるとどうだろう。

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