『ひぐらしのなく頃に 業』の革新的構造 新規視聴者と古参ファンの構図が作品世界に反映?

『ひぐらしのなく頃に 業』の革新的構造

 ライターとして頭を悩ますのがネタバレの問題だ。当然公開直後の映画などは直接的にラストや大どんでん返しを明かすことはしないが、数十年前の旧作や、そこに触れなければ書きたいことが伝わらない記事の場合、そのさじ加減が難しい。特にミステリー作品となると、その悩みはさらに増大する。今回はオリジナルの『ひぐらしのなく頃に』の内容にも触れていくが、なるべく核心には触れないようにするために、奥歯にものが挟まったような文章になることをご了承願いたい。そのような苦心をしても、語りたいほどの魅力が『ひぐらしのなく頃に 業』にはあるのだ。

 オリジナルの『ひぐらしのなく頃に』は2002年から2006年にかけて発表された、竜騎士07によるミステリー調のノベルゲームだ。同人作品としてコミックマーケットなどで配布したところ、大きな話題を呼び、商業化・テレビアニメ・漫画化などのメディアミックスも果たした。人口の少ない架空の村である雛見沢村を舞台に、昭和58年に発生した怪奇事件とそれに巻き込まれていく登場人物たちを描く。「正解率1%」というキャッチコピーが示すように、難易度の高いミステリーに多くの人々が魅了され、考察し解き明かそうと躍起になった。

 本作は元々がゲーム原作ということもあり、問題編として4章、解答編として4章の計8章の構成となっている。基本として各章で登場人物が変わることもなく、別の章で亡くなった人物が次の章では普通に生存している仕様の作品だ。ミステリーなどを題材としたシュミレーションゲームで言うところの、ルート分岐に近い発想で制作されているといえば伝わりやすいだろうか。

 ここでネタバレになるのだが、本作は、この形式を逆手に取った物語となっているのだ。それはある登場人物がタイムループを繰り返し、何度もこの時代より少し前の雛見沢村に転生し、謎を解明しようと努力している。そしてそのことに気がついている登場人物は誰もおらず、その結果孤軍奮闘していることがある段階で示される。このループする時間を行き来しながら、大きな問題を解決していくという手法は『涼宮ハルヒの消失』や『STEINS;GATE』などのSF作品では見られるものの、ミステリーで導入したことも驚きをもって迎えられたのと同時に、議論を巻き起こしたが、話題性を呼んだ面白い発想だった。

 いろいろなギミックを凝らし多くの媒体に進出し、大きなムーブメントを巻き起こした『ひぐらしのなく頃に』が、少し懐かしい作品となり始めていたころ新作が発表された。しかし新作かリメイクかも明かされず、単に「『ひぐらしのなく頃に』が再びテレビアニメ化。さらに声優はオリジナルキャスト」などの限られた情報のみ発表された。

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