『仮面ライダーセイバー』はなぜポップに? エンディングダンスやふんだんなデジタル特撮の真意

 エンディングのダンスの軽快さと巻き込まれ型主人公の面白さも相まって、作品全体の印象が明るい『セイバー』だが、令和最初の仮面ライダーだった『仮面ライダーゼロワン』(2019年)も、お笑い芸人を目指していた主人公が滑りがちなギャグを連発するという、子どもに受けやすいキャラクター付けが盛り込まれている。こうしたメインターゲットの児童の興味を惹くコメディタッチの演出は、『仮面ライダーW』(2009年)や『仮面ライダーオーズ』(2010年)など、平成ライダー2期に分類されるシリーズ以降は特に顕著で、登場人物の両目がハート模様になったり、ギャグマンガのキャラクターのような派手なリアクションを取ることが多い。デジタル合成の技術が進んだことで、実写の映像を漫画的に誇張する映像作りが簡便になった利点もあるのだろう。ライダーの変身場面と戦闘シーンもまた、戦隊ヒーローたちのようにCGエフェクトを多用した映像が多くなった。

 平成ライダーのすべてがシリアス一辺倒ではなく、子どもにとってキャッチーな登場人物のコミカル演出、視覚的に分かりやすいギャグ描写はあったのだが、それらの愉快な要素をグッと強めた映像作りが平成2期以降に多く散見されるようになったのも確かで、次第にスーパー戦隊の持つ楽しさの線に近くなってきた気がする。とはいえ、スーパー戦隊よりは対象年齢を若干あげて制作しているという仮面ライダーは、放送が進むごとに苦悩する主人公のドラマ性を深め、ハードな展開になるのが毎年のお約束なので、その意味では『セイバー』がどのような作品に成長してゆくか先が楽しみでもある。

■のざわよしのり
ライター/映像パッケージの解説書(ブックレット)執筆やインタビュー記事、洋画ソフトの日本語吹替復刻などに協力。映画全般とアニメを守備範囲に細く低く活動中。

■放送情報
『仮面ライダーセイバー』
テレビ朝日系にて、毎週日曜9:00〜9:30放送
原作:石ノ森章太郎
プロデューサー:井上千尋、水谷 圭、高橋一浩
監督:柴崎貴行、中澤祥次郎、ほか
アクション監督:渡辺 淳
特撮監督:佛田 洋
音楽:山下康介
出演:内藤秀一郎、山口貴也、川津明日香、青木瞭、生島勇輝、知念里奈、レ・ロマネスクTOBI、ほか
(c)2020 石森プロ・テレビ朝日・ADK EM・東映
公式サイト:https://www.tv-asahi.co.jp/saber/
公式Twitter:@saber_toei

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