『賢い医師生活』世界的人気の理由を探る 『応答せよ』シリーズから『はちどり』との関連まで
監督・脚本コンビが韓国ドラマ界に起こす変革
放送が終了してからも、ドラマ公式YouTubeチャンネルで毎週木曜日に蔵出し映像が公開されている。
第1回目では、これまで舞台での活躍が主だったチョン・ミドがソンファ役に決まるまでの秘話が蔵出し映像によって語られ、ジュンワン役のチョン・ギョンホのキャスティング秘話では、「実際の君はツンデレじゃなくて優しい人だから、キャラクターが違うのを心配してるんだ」と監督が語りかける映像が公開された。ちなみに“ツンデレ”の部分はそのまま日本語で、日本の漫画から広まり一般的に使われる単語になっているそうだ。
これらの映像を観ると、撮影が始まる半年ほど前から監督と脚本家がキャストに直に交渉し、キャスティングを進めている。スージン氏によると、韓国のドラマでは脚本家がキャスティング権を持つこともよくあると言う。「場合にもよるけれど、人気脚本家ならキャスティングにも力を持つ。映画だとそれが監督になる。この監督・脚本家コンビは無名でも上手い俳優を抜擢するのがいつも見事で、患者役の俳優たちは映像ではあまり観たことのない役者ばかりだったけど、全員が強烈に印象に残るくらい上手かった」と語る。
また、韓国では一般的に連続ドラマは週2回放送で、このドラマが週1回放送とシーズン制に挑戦したことの理由について、ウォンホ氏は「週2話放送は正直厳しい。僕達だけじゃなく、業界全体を考えても、誰かがシステムを変えなくてはいけない。うまくいけば変わっていくだろう」と説明していた。ソッキョン役のキム・デミョンも「週4日撮影で、2日をバンドの練習と撮影に充てても1日休日があるスケジュールで、撮影後に食事に行くこともできた」と撮影後に語っている。スージン氏は、「週に2話放映だと視聴者をがっちり捕まえることができるから、効果的だと言われている。逆を返すと、週に1話の放送でも視聴者の心が離れないならば、それでもいいということ。視聴者の観点で言うと週に2話観たいと思うのが本心だが、それも変わっていくかもしれない」と解説する。
だが、多くの海外視聴者はNetflixの配信でこのドラマを観ているわけで、日本での配信は韓国で最終回を迎えた後、6月から全話が一気に配信された。世界では、配信サービスが毎週決まった時間にドラマを観る習慣からビンジウォッチ(一気見)へと視聴習慣を劇的に変化させている。週2話のスタンダードに変化が訪れるのも、時間の問題とも言える。また、シーズン制を導入するにあたり、毎週新しい未公開映像を配信しシーズン2の予告編が世に出るまで続けられるそうだ。
このような仕掛けからも、新しい試みを積極的に導入するシン・ウォンホ氏の韓国のドラマ界を変えていこうという気概が感じられる。現在、シーズン3まで計画されている『賢い医師生活』は、2021年のシーズン2、そしてその先のシーズンとまた新しい試みを導入し、その度に世界中のファンを夢中にさせるに違いない。
参考
・https://flixpatrol.com/title/hospital-playlist/streaming
・https://screenrant.com/kdrama-korean-series-best-ranked-imdb-score/
・http://www.maniareport.com/view.php?ud=20180119194909585ncut_19
■平井伊都子
ロサンゼルス在住映画ライター。在ロサンゼルス総領事館にて3年間の任期付外交官を経て、映画業界に復帰。
■配信情報
『賢い医師生活』
Netflixにて配信中
写真はtvN公式サイトより