『プラド美術館』で、今こそ“異国情緒”を味わう 芸術のアーカイブの重要性に気づきを与える一作に

『プラド美術館』で味わう“異国情緒”

 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、好きな食べ物はパエリアの島田が、『プラド美術館 驚異のコレクション』をプッシュします。

『プラド美術館 驚異のコレクション』

 

ゴヤ、グレコ、ベラスケスなどスペイン美術の数々が保存されたプラド美術館の全貌を伝えるドキュメンタリー『プラド美術館 驚異のコレクション』が、公開を迎えた。

 映画における役割の大きな一つが「アーカイブ」であり、本作においてもそうした「アーカイブ」の重要性を改めて実感できる内容となっている。プラド美術館本体においてもそうしたアーカイブが進められており、収蔵品を保存、修復、研究するスタッフの作業風景が映し出されている。

 インターネット技術の発展によって、jpeg形式で様々な名画を見ることは限りなくイージーになったが、特に美術においてはその細やかなディテールにこそ作家の筆致が宿ると言われている。撮影禁止が徹底されているプラド美術館の全面協力を得た本作では、そうしたディテールを隈なく抽出しようという執念すら感じさせるほどに名作の数々に接近、撮影しており、非常に贅沢かつ貴重な時間を体験することができる。 

 「敷居が高い」という印象の強い絵画だが、本作を観ることでそうしたイメージも払拭されるのではないだろうか。建築家ノーマン・フォスター卿やダンサーといった人物たちが独自の芸術への愛を次々と楽しそうに語る姿は観ているこちらも微笑ましくなってしまうほど。ちなみに、モダニズムの雄としても知られるフォスター卿は、プラド美術館200周年事業のリノベーションも担当している。スペインといえばプラド美術館のような絵画はもちろん、建築でも知られる国。あらゆる分野において共通するスペインならではの美意識も感じられ、美術に疎いという方でもスペインという文化の発端に触れられるのではないだろうか。コロナ禍で、外出が制限されている現在、スペインを疑似体験する気持ちで映画館に足を運んでみても面白いかもしれない。

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