『やまとなでしこ』の松嶋菜々子はなぜ魅力的だったのか 恋愛ドラマ壊滅時代に再放送される意義
ここ数年、日本のテレビ業界で真っ向勝負の恋愛ドラマ制作数は激減した。話題を呼んだ『逃げるは恥だが役に立つ』も『凪のお暇』(ともにTBS系)も恋愛を軸のひとつにしながら、じつはジェンダーや労働問題といった社会的なテーマを扱った作品だし、今期も(新型コロナウイルスの影響でほとんどの新作撮影が止まったとはいえ)地上波ゴールデンタイムでベタな恋愛ドラマは見つけられない。どの局も前面に押しているのはお仕事ドラマだ。この1、2年で大ヒットした「ザ・恋愛ドラマ」は上白石萌音と佐藤健主演の『恋はつづくよどこまでも』(TBS系)くらいではないだろうか。
そんな地上波恋愛ドラマ壊滅時代にOAされる『やまとなでしこ』。リッチな男性と結婚することが人生のゴールだと信じる桜子と、誠実で優しいが圧倒的に生きることに不器用な欧介との勘違い、すれ違い、切なさと迷いが交差する王道ラブロマンスコメディ。初放送時から20年たった今観ると、それはSFレベルのファンタジーに映るかもしれない。でも、こんな時だからこそ、夢のようなファンタジーの世界に身を浸したいとも思う。画面に向かって「ないわー」「マジすか」とツッコミながら、笑ったり涙したりドキドキして心拍数を上げたいのだ。
そして忘れてならないのがMISIAが歌った主題歌「Everything」。あのイントロが流れ「すれ違う時の中で……」とすべてを包み込むような歌声が聞こえてきた瞬間、私たちは一気に『やまとなでしこ』の世界に飛ばされる。桜子と欧介の恋の行方、じつはそれもこのナンバーの歌詞に隠されているのかもしれない。
優しい嘘ならいらない、欲しいのはあなた……。
■上村由紀子
ドラマコラムニスト×演劇ライター。芸術系の大学を卒業後、FMラジオDJ、リポーター、TVナレーター等を経てライターに。TBS『マツコの知らない世界』(劇場の世界案内人)、『アカデミーナイトG』、テレビ東京『よじごじDays』、TBSラジオ『サキドリ!感激シアター』(舞台コメンテーター)等、メディア出演も多数。雑誌、Web媒体で俳優、クリエイターへのインタビュー取材を担当しながら、文春オンライン、産経デジタル等でエンタメ考察のコラムを連載中。ハワイ、沖縄、博多大吉が好き。Twitter:@makigami_p
■放送情報
『やまとなでしこ 20周年特別編』
フジテレビ系にて放送
第1夜「ずっと探してた人」:7月6日(月)21:00~22:48
第2夜「いつか王子様が」:7月13日(月)21:00~22:48
出演:松嶋菜々子、堤真一、矢田亜希子、筧利夫、須藤理彩、東幹久、森口瑤子、西村雅彦ほか
脚本:中園ミホ、相沢友子
主題歌:MISIA「Everything」(Sony Music Labels)
企画:石原隆
演出:若松節朗、平野眞
プロデュース:岩田祐二
制作:フジテレビ
制作著作:共同テレビジョン
(c)フジテレビ
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