授賞式は2カ月後ろ倒しの4月25日開催に 2021年のアカデミー賞はどうなる?

2021年のアカデミー賞はどうなる?

 2021年度の第93回アカデミー賞授賞式は、例年より2カ月遅い4月25日に開催されることが発表された。これまでにもコロナウイルス感染拡大を受けてアカデミー賞の受賞資格などが大幅に変更されてきたが、アカデミー賞を主催する映画科学芸術アカデミー(AMPAS)と放送権を持つABCテレビは2カ月の延期を決定した。オリンピック同様、アカデミー賞授賞式は巨額の放送権料を生み出すコンテンツなので、AMPASとABCが二人三脚で延期日程の選定にあたったとみられる。その上、AMPASは数年かけてアカデミー・ミュージアム開館プロジェクトを並走させていて、それら全てを加味した結果が2021年4月25日という日程なのだろう。

 とはいえ、現時点ではアカデミー賞授賞式の日程が変更になったに過ぎず、会場で行うのか、観客を入れるのか、またはスタジオ形式なのかは未定だ。世界の映画関連イベントでは、カンヌ映画祭が実質映画祭を中止し、カンヌ・セレクションのリストを発表した。6月5日に行われた韓国のアカデミー賞とも言われている百想芸術大賞は観客を入れず、候補者が“ソーシャル・ディスタンス”を守りながら広いホールに座る形式で行われた。9月初旬のテルライド映画祭(アメリカ)は開催予定、ヴェネチア映画祭(イタリア)も予定通り開催、作品本数を絞りレッドカーペットを実施予定と発表している。北米最大の映画祭でアカデミー賞に向けた賞レースのスタート地点と言われる9月のトロント映画祭(カナダ)はまだフィジカルとバーチャル両方の可能性を探っている状況だという。ただし、現時点では各国が出入国制限や入国時の検疫を義務付けていて、海外からの参加は相当ハードルが高いと言わざるを得ない。

 アメリカでは、3月初旬から閉鎖していた映画館の営業を5月末より段階を追って再開している。まだ全てのビジネスが再開しているわけではないロサンゼルス市の劇場では、7月中旬から徐々に劇場を開けていく方針がとられている。米シネコン大手のAMCグループは、7月15日より約450館で劇場営業を再開。7月24日の『ムーラン』、7月31日の『TENET テネット』公開までには、ほぼ全館で営業を再開する予定だ。再開当初は劇場キャパシティの25%~30%の客入れとし、徐々に稼働率を上げていく。9月第1週のレイバーデイまでに50%、11月末の感謝祭には100%まで上げていきたいとしている。2020年6月現在、アメリカで今年公開された映画本数は262本。2019年度が909本なので、約28%の作品しか公開されていないことになる(参考:https://www.boxofficemojo.com/year/?ref_=bo_nb_ml_secondarytab)。

 授賞式延期に先立って発表された出品資格の緩和策では、当該年度末(12月31日)までに公開を2021年2月28日までに延長し、2020年に失われた3カ月後ろ倒しにした。また、州政府が設定したガイドラインに基づき、劇場が再開されるまでの期間にオンラインで配給された作品に関しても出品資格を与えるとしているが、AMPASはまだ期日の発表をしていない。投票権を持つAMPAS会員向けの試写もオンラインで行い、来年以降はDVDやブルーレイでの試写を取りやめる。コロナ禍を受け、各メジャースタジオの収支の屋台骨となるテントポール作品は2021年度以降に公開日を大幅に延期した作品も多く、映画の公開だけでなく制作も行うインディペンデント系映画会社は資金面でも窮地に立たされている。3月以降世界中で映画の制作がストップしているため、6月からようやく撮影再開の目処が立ってきたところで、制作体制の遅れを3カ月で取り戻せるとは思えない。そして、2022年度以降の出品資格は例年通り年末に戻すとわずか9カ月の間に公開された作品しか資格を得ないことになる。この誤差をどう調整するのか、問題は山積みのままだ。

 今年2月に行われた第92回アカデミー賞の作品賞、脚本賞、監督賞、海外長編賞の4部門を受賞した『パラサイト 半地下の家族』(ポン・ジュノ監督)は昨年5月のカンヌ映画祭でパルムドールを受賞し、9月のトロント映画祭を経て全米公開された。ホアキン・フェニックスが主演男優賞を受賞した『ジョーカー』は9月のヴェネチア映画祭、ブラッド・ピットが助演男優賞を受賞した『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』がカンヌ、レネー・ゼルウィガーが主演女優賞を受賞した『ジュディ 虹の彼方へ』は8月のテルライド映画祭、ローラ・ダーンが助演女優賞を受賞した『マリッジ・ストーリー』もヴェネチア、脚色賞の『ジョジョ・ラビット』が9月のトロント映画祭と、多くの部門の受賞作品は春~秋にかけて世界各地で行われた映画祭でプレミアを行い評判を高め、オスカー戦線に乗り込んだ。例年12月末の締め切り間近にロサンゼルスとNYで限定公開を行い、投票者にフレッシュな印象を残すマーケティングを行う作品も多いが、2020年度の流れとしては各映画祭から息の長いキャンペーンを行った作品に勝敗が挙がった。だが、2021年度に関しては映画祭の開催や出席状況も見通しが立たないため、キャンペーン担当者は頭を悩ませていることだろう。

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