『くちびるに歌を』は原石だらけの鉱脈だった 恒松祐里、佐野勇斗ら卒業生たちのその後

恒松祐里ら『くちびるに歌を』卒業生たち

 葵わかなは、2017年から2018年にかけて放送された朝ドラ『わろてんか』(NHK総合)でヒロインを全うし、日曜劇場『ブラックペアン』(2018年/TBS系)ではヒロインを、『青夏 きみに恋した30日』(2018年)では主演を務めるまでになった。今年は、木下晴香とともにダブル主演を務めたミュージカル『アナスタシア』が上演されたが、その公演のほとんどが新型コロナウイルスの感染拡大によって中止に。フジテレビ開局60周年特別企画として放送された『教場』でも、並み居る若手の猛者たちのなかで実力を示した彼女なのだから、2020年下半期、葵の活動を見守りたい。

『小さな恋のうた』(c)2019「小さな恋のうた」製作委員会

 『くちびるに歌を』が俳優デビュー作であった佐野勇斗は、この5年間でもっとも飛躍した存在だといえるだろう。ことに、2018年は大活躍。映画『ちはやふる』シリーズの完結編である『ちはやふる -結び-』(2018年)に顔を見せ、『青夏 きみに恋した30日』では葵と、『3D彼女 リアルガール』(2018年)では中条あやみと、それぞれダブル主演を務めている。そして、昨年公開された主演作『小さな恋のうた』は、彼の名刺代わりの一作になったのではないかと思う。音楽を通して、人種、文化の壁をも貫いていこうとする少年を好演したのだ。「音楽」をメインに扱った作品でデビューした彼が、「音楽」でメッセージを届けようとする若者たちの姿にフォーカスした作品で主演を張っていることは非情に感慨深い。

 ほかの“卒業生”一人ひとりについても述べていきたいが、ここでとどめることにしたいと思う。さて、これから彼らは、どのような俳優になっていくのだろう? 『くちびるに歌を』のときと同じように、いや、ともするとそれ以上に、“中五島中学校合唱部OB”による『手紙 〜拝啓 十五の君へ〜』のリモート合唱には勇気づけられた。この環境下、彼ら自身が口ずさんでいた歌詞はリアリティを持ったことだろう。“笑顔を見せて、今を生きていこう”ーー彼らの未来が明るいものであると願いたい。

『手紙 〜拝啓 十五の君へ〜』 by “くちびるに歌を” 中五島中学校合唱部OB

■折田侑駿
1990年生まれ。文筆家。主な守備範囲は、映画、演劇、俳優、服飾、酒場など。最も好きな監督は増村保造。Twitter

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