『アシガール』アンコール放送で再確認! 黒島結菜&伊藤健太郎の飛躍に繋がった重要作に
一方、原作ファンの支持が非常に高い若君を演じた伊藤も制作陣から、大きなプレッシャーをかけられていたという。しかも時代劇初挑戦であり、所作を含め現代劇とは勝手が違うことも多々あるという厳しい現場。そんななか、難易度の高い原作コミックのキャラクターに臆することなく、清潔感溢れる凛とした佇まいを見せた伊藤のポテンシャルの高さに驚かされた。口数がそれほど多くない役柄だけに、間や表情の芝居が重要だったが、とにかく目の芝居の説得力がすごかった。語らずも、若君の内に秘めた思いが伝わってくるシーンが多々あった。
本作後、連続テレビ小説『スカーレット』では、戸田恵梨香演じる川原喜美子の息子・武志に扮した伊藤。物語の終盤に大きな病におかされてしまったあと、自身の運命に対して悲観する思いや、家族や周囲への感謝、さらには厳しい状況のなかでも前を見つめる強さなど、複雑な感情が入り乱れる胸の内を、相手に向ける眼差しだけで表現する場面も多く、視聴者の涙を誘った。
伊藤は2020年、現在発表されているだけでも5本の劇場公開映画が控える。ビジュアルの人気はもちろんだが、確かな演技力を評価する製作陣は多い。黒島も、前述したドラマ以外にも、2019年に公開された映画『カツベン』では100人のオーディションからヒロインに抜擢され、名匠・周防正行監督のもと、駆け出し女優を瑞々しく好演。現場で黒島は周防監督からかけられた厳しい言葉で、より能動的に役柄に向き合うようになったと話していた。
『アシガール』出演から、大きな飛躍を遂げた黒島と伊藤。改めて作品を観返してみると現在の魅力となっている黒島の“瞬発力&躍動感”、伊藤の“静的な間の芝居”の魅力が『アシガール』の演技に詰まっていると強く感じられた。
■磯部正和
雑誌の編集、スポーツ紙を経て映画ライターに。基本的に洋画が好きだが、仕事の関係で、近年は邦画を中心に鑑賞。本当は音楽が一番好き。不世出のギタリスト、ランディ・ローズとの出会いがこの仕事に就いたきっかけ。
■放送情報
『アシガール』
出演:黒島結菜、伊藤健太郎、松下優也、ともさかりえ、川栄李奈、石黒賢、イッセー尾形ほか
原作:森本梢子
脚本:宮村優子
音楽:冬野ユミ
演出:中島由貴、伊勢田雅也、鹿島悠(NHKエンタープライズ)
制作統括:内田ゆき(NHKエンタープライズ)、土屋勝裕(NHK)
写真提供=NHK
公式サイト:http://www.nhk.or.jp/jidaigeki/ashigirl/