榮倉奈々が母娘を救うために見出した決断 『99.9 特別編』第3夜は奥深い人間ドラマに
立花が見出したスタンスは、依頼人の要望に応じて割り切る佐田とも、とことん真実を追求する深山とも異なるものだ。依頼人とは異なる立場から依頼人のために全力を尽くすという姿勢は、3人の中でもっとも一般的な感覚を持ち、依頼人に寄り添うことのできる立花だからこそ持ちうるものだった。「私はあなたの弁護人です。でも、あなたの苦しみは私にはわかりません」と果歩に話す立花の言葉からは、依頼人の人生を背負う覚悟が伝わってきた。
事件のほうは真犯人が明らかになり、ギリギリの勝負に出た立花の決断が逆転劇を呼び込む。真実は一つしかなく、真実に到達することは解決の大きな力になるが、法を適用すれば常に同じ結論になるわけではなく、法を駆使して互いの主張を戦わせる駆け引きが裁判の本質であることを雄弁に物語っていた。犯人につながる情報を提供した佐田のアシストや深山のひらめきなどチームワークで勝ち取った無罪であり、その中心にいたのが立花だった。
見事な勝利を収めた刑事専門ルームの3人だが、現実社会で弁護士は陰の主役というポジションにとどまる。真の主役はそれぞれの人生を生きる依頼人や被害者だ。複雑な背景を持つ果歩を演じた山下リオと病床の冴子役の麻生祐未による渾身の演技は役を生き切ったという言葉がふさわしい。弁護士や検事が主人公の法廷ものでは、「素材」となる人間ドラマが真に迫っているからこそ「調味料」の法廷劇も引き立つ。単なるヒーローものとは一味違う『99.9』の奥深さを感じさせる回だった。
■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。ブログ/Twitter
■放送情報
『99.9-刑事専門弁護士- SEASON Ⅰ 特別編』
TBS系にて、6月21日(日)21:00~21:54第4夜放送
出演:松本潤、香川照之、榮倉奈々、青木崇高、片桐仁、マギー、渡辺真起子、馬場徹、映美くらら、池田貴史、岸井ゆきの、藤本隆宏、奥田瑛二、岸部一徳
脚本:宇田学
演出:木村ひさし、金子文紀、岡本伸吾
プロデューサー:瀬戸口克陽、佐野亜裕美、東仲恵吾
トリック監修:蒔田光治
主題歌:嵐「Daylight」(ジェイ・ストーム)
製作著作:TBS
(c)TBS