劇団ロロ 三浦直之に聞く、演劇の現状と未来像 「変化に対してどう向き合っていくか」

劇団ロロ 三浦直之が語る“演劇の今”

コロナウイルスを経て変わった創作のビジョン

ーー劇場が再開された場合、どのような形で公演はスタートしていくのでしょうか?

三浦:先日目にしたとあるガイドラインでは、出来る限り稽古も本番中もマスクを着用することが推奨されていましたね。外を歩いているときにちょっと咳き込む音が聞こえるだけで、過敏になってしまう自分もいる。その過敏さは観客も絶対に感じて、ちょっとでも触れ合ったら「今触れた」と敏感に反応してしまう。でも、演劇は触れ合うものだと思っているので、そこをどう作っていくかはすごく考えています。

ーー演劇ビジネスの面では、今後どんな問題点が出てくるのでしょうか?

三浦:ソーシャルディスタンスを確保するために、劇場の50%の客席数を満席とした場合、採算が取れる公演はないと思います。客席は1席ずつ空けて50%の状態にして、あとは映像にして販売して、残りの分をどうやってペイするか。そういう形で回していく劇団が増えていくのかなと思います。

ーー今回のコロナウイルスを経てビジョンは変わりましたか?

三浦:6月に予定していた『ロマンティックコメディ』という作品は、恋愛至上主義の社会から解放した上でもう一度どうやって恋愛を描くかを、なるべくロマコメとして楽しく描きたいなと思っていたんです。そのときにやっぱり性愛というものが入ってくるし、性愛というのは触れ合うことですが、触れ合うこと自体を描くのがすごく難しい。この作品もいつか上演したいですが、そのときはコロナの前に考えていた性愛の描き方も、たぶん意識として変わらざるを得ないんじゃないかなとは思ってます。

ーー三浦さんはドラマなどで映像の作品も手掛けていますが、映像においての変化はどうなっていくと思いますか?

三浦:映像作品は脚本で関わらせてもらっていますが、食事シーンを撮るのが難しいようですね。感染リスクが高まる食事シーンは今後描きづらいかもしれないと言われていたりするので、すごく大変だなと。

ーー自粛生活などコロナウイルスの影響を受けた生活を体験して、作家として今後描いていきたいテーマなどもできたのでしょうか?

三浦:ずっと考えているのは、暴力と眼差しです。演劇って客席から舞台をまなざす、舞台からも客席をまなざすみたいに、眼差しを複数化するものだと思うんです。今、監視や管理が強まっていくのはすごく怖いなと思っているので、そのことはいつかちゃんとテーマにしてみたいなと思っています。

ーー最後に演劇ファンの方に向けてメッセージをお願いします。

三浦:今回のことを通じて1番感じたのは、演劇は観客がいないと成立しないというとても当たり前のことでした。言ってしまえば、俳優がいなくても観客がいれば演劇は成立する。観客がいてくれればなんでも演劇にできるとも言えます。今までたくさん観にきてくださった方たちのことを思い出しながら『窓辺』に取り組んでいるので、また劇場で再会できたときに、そのことをフィードバックして届けられたらいいなと思っています。

【特集ページ】「コロナ以降」のカルチャー 現在地から見据える映画の未来

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる