『捨ててよ、安達さん。』『有村架純の撮休』“実名ドラマ”なぜ流行? YouTubeとの比較で考える
「俳優+物語」=「実名ドラマ」だからこそできること
安達祐実が本人役を演じる『捨ててよ、安達さん。』は、女性誌の企画で「毎号私物をひとつ捨てる」というコラムの連載を持ちかけられることから始まる実名ドラマだ。捨てられたいと願うモノが夢の中に人間化して現れ、自ら直談判するファンタジー的な物語が『勝手にふるえてろ』の大九明子監督らによってコメディ仕立てに織り上げられている。これも、まさしく雑誌で読むコラムが映像化されているような感覚で、安達祐実本人の魅力と用意された物語とのケミストリーによって唯一無二のドラマを創出。実名ドラマのさらなる可能性を感じさせるストーリーになっている。
『捨ててよ、安達さん。』のように、俳優の影響力や人気を活かした実名ドラマという形式だからこそより複雑な意味をなす作品もある。NHKテレワークドラマの「転・コウ・生」がまさしくそうだった。登場人物は柴咲コウ、ムロツヨシ、高橋一生、脚本は森下佳子と、NHK大河ドラマ『女城主 直虎』のチームが再集結したことでも話題を呼んだ本作。その元からある関係性はそのままに、「突然入れ替わってしまう」というフィクションを用いながら、「人々がコロナ禍に適応することを強いられていく」現状を鋭く捉えた。このドラマには「いつもテレビで観ている俳優だって、私たちと同じようにコロナの影響を受けているんだ」と親近感を覚えることができるし、「一緒に乗り越えよう」と暗に伝えるメッセージはきっと視聴者の励みになるはずだ。
先日発表された坂元裕二脚本によるNHKドラマ『リモートドラマ Living』は、広瀬アリス、広瀬すず姉妹や、永山瑛太、永山絢斗兄弟など、実際の家族が「家族」役を演じると公示され、期待が高まっている。本人役を演じるというわけではないようなので実名ドラマとはまた異なるが、これは複雑な人間模様を描く坂元裕二脚本ならではの本格ドラマと、本人たちの関係値をそのまま活用するというフェイクドキュメンタリー的な要素が組み合わさったハイブリッドな作品であると予想される。このように、物語のあり方、俳優のあり方がどんどん多様化している現在。その先には、多様な側面から俳優に接することができる幸福な世界が広がっているはずだ。
■原航平
ライター/編集者。1995年生まれ。「リアルサウンド」「クイック・ジャパン」などで、映画やドラマ、YouTubeの記事を執筆。Twitter/ブログ
■放送情報
ドラマ25『捨ててよ、安達さん。』
テレビ東京、テレビ大阪ほかにて、毎週金曜深夜0:52〜1:23放送
ひかりTV、Paraviにて、毎週金曜23:00〜 ※毎放送1週間前から先行配信
出演:安達祐実、川上凛子、⻄村晋弥、臼田あさ美、梶原ひかり、片桐はいり、加藤諒、貫地谷しほり、北村匠海、早織、じろう(シソンヌ)、徳永えり、戸塚純貴、松本まりか、YOU、渡辺大知
監督:大九明子、成瀬朋一、林雅貴
脚本:下田悠子、大九明子
音楽:侘美秀俊
プロデューサー:漆間宏一(テレビ東京)、加藤伸崇(S・D・P)、坪ノ内俊也
制作:テレビ東京、S・D・P
(c)「捨ててよ、安達さん。」製作委員会
公式サイト:https://www.tv-tokyo.co.jp/suteteyo_adachisan/
公式Twitter:@suteteyo_adachisan
公式Instagram:@suteteyo_adachisan