『きのう何食べた?』映画化の要因は? 2000年代から変容するTVドラマと映画の関係性

『きのう何食べた?』映画化の要因は?

 また、最近になり『コンフィデンスマンJP』(フジテレビ系)、『今日から俺は!!』(日本テレビ系)、『奥様は、取り扱い注意』(日本テレビ系)、『シグナル 長期未解決事件捜査班』(カンテレ・フジテレビ系)と、TVドラマの映画化が数多く発表されている。以前は、『踊る大捜査線』(フジテレビ系)を筆頭に、日本映画界を牽引するほどのヒットを飛ばしていたドラマから映画へといった流れだったが、近年の現象は2000年代のものと少し違っているという。

「良くも悪くも境界がなくなってきていると思います。『今日から俺は!!』の福田雄一監督はドラマも映画も両方手掛けている方ですが、昔に比べると映画とドラマ両方のジャンルを横断する人が増えてきた。ドラマの映画化が大きく変わったのは『踊る大捜査線』以降ですが、当時はまだ、映画化する際に豪華なゲストを起用したり、派手なシーンを入れたりと無理してテレビの豪華版を作ろうとしていました。しかし、最近の映画化は、映画だから「ドラマでできないことをやる」のではなく、ドラマで積み重ねてきたものを変わらずに映画でやるといった風に、無理をしなくなっている印象があります。また、アニメもそうですが、TVシリーズの映画化は登場人物の紹介を省けるので、ドラマを作りやすいんです。『バットマン』シリーズなどのアメリカン・コミックスの映画化もそうですが、第1作目はどうしても登場人物の紹介に比重を置いてしまうので、ドラマが大きく展開するのは2作目以降というケースが多い。TVシリーズからの映画は、そのような部分を省けるので、作り手が本当にやりたいことに挑戦しやすい。そういったことが劇場版として展開しやすい要因なのではないでしょうか」

 最後に成馬氏は、ドラマと映画の関係性についてこう締めくくる。

「昔のような、映画化=ビックイベントではなくなってきているのだと思います。つまり、映画がクライマックスではない。『きのう何食べた?』は、映画の後も、スペシャルドラマやシーズン2といった形で展開ができると思います。映画になることが特別だった頃から、時代は少し変容しているのではないでしょうか」

■公開情報
劇場版『きのう何食べた?』
2021年、全国東宝系にてロードショー予定
出演:西島秀俊、内野聖陽、山本耕史、磯村勇斗、マキタスポーツ、田中美佐子、梶芽衣子
原作:よしながふみ『きのう何食べた?』(講談社『モーニング』連載中)
監督:中江和仁
脚本:安達奈緒子
チーフプロデューサー:阿部真士
プロデューサー:佐藤敦、瀬戸麻理子
企画監修:神田祐介
制作 : エイベックス・ピクチャーズ/ザフール
(c)2021劇場版「きのう何食べた?」製作委員会 (c)「きのう何食べた?」製作委員会
公式サイト:https://www.tv-tokyo.co.jp/kinounanitabeta/
公式Twitter:https://twitter.com/tx_nanitabe

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