伊藤健太郎、『スカーレット』は紛れもない代表作に 光る“真面目さ”で主役街道へ

伊藤健太郎が乗り越えた『スカーレット』

 さらに武志は、『スカーレット』の後半戦を大きく引っ張る大役でもあった。喜美子と八郎を繋ぐ“かすがい”を担い、2人を再度引き合わせた後に、白血病を患い喜美子や八郎にとっての“試練”へと変容する。これは川原家を描く上での非常に重要なポイントとなり、喜美子と八郎の価値観を引き出すための役周りともなる。武志を演じる上での器用な立ち振る舞いは、伊藤が長きにわたり“影から支える”役を多くこなしてきた経歴も関係しているだろう。ヒロインを支え、主役を支え、作品を支える。今までの伊藤はまさに、俳優としてそんなポジションが多い。

『スカーレット』第150話(写真提供=NHK)

 その一方で、2020年からは主演作が増える。今までは誰かを輝かせることで自身も輝く芝居に徹してきた伊藤が、自らの力で切り拓き前に進まなくてはならなくなる。これから公開される作品では、そんな伊藤の一面がより色濃く出るだろう。終盤では、顔も一回り小さくなり胸板も薄くなった伊藤だが、彼がプロ根性で乗り越えた『スカーレット』は紛れもない彼の代表作となったと言えるだろう。

■Nana Numoto
日本大学芸術学部映画学科卒。映画・ファッション系ライター。映像の美術等も手がける。批評同人誌『ヱクリヲ』などに寄稿。Twitter

■放送情報
NHK連続テレビ小説『スカーレット』
2019年9月30日(月)〜2020年3月28日(土)
出演:戸田恵梨香、伊藤健太郎、松下洸平、大島優子、林遣都、桜庭ななみ、福田麻由子、稲垣吾郎、田中美央、松田るか、七瀬公、大江晋平、村崎真彩ほか
脚本:水橋文美江
制作統括:内田ゆき
プロデューサー:長谷知記、葛西勇也
演出:中島由貴、佐藤譲、鈴木航ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/scarlet/

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