『テセウスの船』白鳥玉季、大人と張れる演技に絶賛! “上手い子役”というよりも“女優”の風格
また、田中圭主演の映画『mellow』では、田中演じる独身・オシャレな花屋の店主・夏目の姪っ子・さほを演じている。さほは、転校後、小学校に行けない日がたまにあって、そんなときにやってくるのが、夏目のところだった。自身の悩みなど、多くは語らず、おじの周りの恋模様などを興味津々で眺めている、繊細で、ちょっと大人びた女の子だ。
『凪のお暇』と『テセウスの船』『mellow』の役柄で共通しているのは、周囲の子より精神年齢が高かったり、純粋で優しかったりするために、「女子の世界」の同調圧力に馴染めず、ときどき疲弊したり、かと思えば妙に達観していたりすること。そして、そんな人間関係のわずらわしさを知る大人びた感覚を持つ一方で、子どもらしい無邪気さや素直さ、自身の中に信念や真っすぐな思いを持っていること。
こうした「生きづらさ」に対する疲れや諦念、気丈さや芯の強さを同時に表現するのは、近年のドラマや映画において、もっぱら30代主演女優が求められがちなことだと思う。役柄が背負う、求められる要素がすでに「天才子役」というよりも「女優」なのだ。
ところで、昔に比べ、今は非常にリアルな演技をする達者な子役が多数いる時代。その理由について、以前、週刊誌で赤ちゃん&子役タレントの連載をしたとき、子役事務所の方からこんな話を聞いたことがある。
「今の子役のレッスンでは、国語の読解問題のように、台本を読んで主人公の気持ちを考えることや、『感情の作り方』を学びます。たとえば、泣く演技では、『どういうときに人は悲しいか』と考えさせ、『自分はどんなとき悲しくなるか』を言わせてみる。答えはたいてい『宝物がなくなったとき』とか『ペットが死んだとき』なんですけどね」
まずは自分自身の感情と向き合い、感情の作り方・表現の仕方を理解する作業をレッスンの下積みとして行うため、今の子役たちは「感情で演技をする」。だからリアルなのだという。
そうした演技力の高い多数の子役たちと比較しても、白鳥玉季が特異なのは、「泣きの演技で見せる」という「天才子役」の域にいないこと。泣きたいときに笑顔を見せたり、悲しいときに気丈な顔を見せたり、ときには何度目の人生かと思わせるようなドキッとする大人びた顔を見せる。これで小4というのだから、何度もタイムスリップを繰り返しているのではないかと思えてしまうほどだ。
『テセウスの船』では、再び心が事件の起こった31年前の世界に戻る展開が描かれ始めた。視聴者の願う声も多かった、白鳥玉季の再登場を果たす。今後の展開がますます楽しみだ。
■田幸和歌子
出版社、広告制作会社を経てフリーランスのライターに。主な著書に『KinKiKids おわりなき道』『Hey!Say!JUMP 9つのトビラが開くとき』(ともにアールズ出版)、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)などがある。
■放送情報
日曜劇場『テセウスの船』
TBS系にて、毎週日曜21:00~21:54放送
出演:竹内涼真、榮倉奈々、安藤政信、貫地谷しほり、芦名星、竜星涼、せいや(霜降り明星)、今野浩喜、白鳥玉季、番家天嵩、上野樹里(特別出演)、ユースケ・サンタマリア、笹野高史、六平直政、麻生祐未、鈴木亮平
原作:東元俊哉『テセウスの船』(講談社モーニング刊)
脚本:高橋麻紀
演出:石井康晴、松木彩、山室大輔
プロデューサー:渡辺良介、八木亜未
製作:大映テレビ、TBS
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/theseusnofune/