井筒和幸監督8年ぶりの新作『無頼』公開へ 松本利夫、柳ゆり菜、中村達也らが出演

井筒和幸監督8年ぶりの新作『無頼』公開へ

 『パッチギ!』『黄金を抱いて翔べ』の井筒和幸監督8年ぶりとなる新作映画『無頼』が、5月16日より新宿K’s cinemaほかにて全国順次ロードショーされることが決定した。

 本作は、1975年のデビュー作以来、社会のあぶれ者、はみ出し者を冷徹かつ共感に満ちた視線で描き続けてきた井筒監督の真骨頂にして集大成とも言える、もう一つの戦後史。

 主人公は、誰もが“欲望の資本主義”を追いかけた戦後日本そのもの。敗戦直後の動乱期から所得倍増、奇跡の高度経済成長、政治の季節とオイルショック、さらにはバブルの狂騒と崩壊までーー。激しく変転を続けた昭和という時代が、世間という“良識の監獄”の外側で生き抜いたヤクザ者たちの群像劇を通して逆照射される。

 背景にさまざまな事件や社会風俗が盛り込まれた物語の主軸となる伝説のアウトサイダーを演じるのは、EXILEのパフォーマーとして活躍し、現在は俳優としてテレビ・舞台で活躍する松本利夫。彼の人生を支えた妻・佳奈役には、映画『純平、考え直せ』のヒロインに抜擢されるなど女優としての活躍も目覚ましい柳ゆり菜が決定した。

 そのほか、木下ほうか、ラサール石井、升毅、小木茂光、隆大介、外波山文明、フォークシンガー三上寛、日本屈指のドラマーとして名高い中村達也などの実力派が脇を固める。さらには、オーディションで選ばれた総勢300人もの俳優陣が、練達の井筒演出のもと全身全霊の芝居で見せ場を競う。 

 極貧ゆえに社会から頭を抑えつけられ、飢えや冷たい眼差しに晒されながらも、何にも頼らず、ただ己の内なる掟に従って真っ直ぐ生きた主人公。やがて彼は一家を構え、同じような境遇のはみ出し者たちを束ね、命懸けの裏社会を駆け上がっていく。

井筒和幸監督 コメント

改めて振り返ってみると、社会のあぶれ者、はみ出し者ばかり描いてきました。デビュー作の『ガキ帝国』では1968年、大阪ミナミを闊歩する少年院上がりの不良少年たちを。『犬死にせしもの』では終戦直後、陸軍の復員兵上がりの無法者たちを。『岸和田少年愚連隊』では1976年、大阪の田舎町にくすぶる格差教育の落ちこぼれの不良少年どもを。『パッチギ!』では1968年、京都ゼロ番地に生きる在日朝鮮人の高校生たちを。『ヒーローショー』では2010年、都市部を彷徨うまさに平成の「失われた世代」のはぐれ者たちを。そして『黄金を抱いて翔べ』では金塊強奪の夢に命を賭けた虚無的な流れ者たちを──。時代や設定こそ違えど、登場人物たちは誰もが社会から無用とされ、貧困と差別、汚辱に暴力で抗ってきた「寄る辺なき者たち」だと言えます。今回の『無頼』でもやはりスクリーンを彩るのは、欲望の昭和を徒手空拳で生き抜いた、文字どおり無頼の徒たちです。

時代は昭和から平成、令和へと移っても、貧困や差別、孤立は何も変わっていません。本作ではアウトロー社会という、世間の良識から排除されたネガ画像をあえて描くことで、僕なりの昭和史を逆照射してみたいという思いもありました。ことの是非を語るのではなく、ただ、こんなふうに無頼な生き方を通した男たちがいたということを、現代の若者に見せたいと思ったんです。そして、自分を抑えつけるあらゆる抑圧に対して一歩も引かなかった彼らの人生を通じて、“くじけるな、寄る辺なきこの世界を生き抜け”と励ましてあげたい。それがこのシャシンに込めた、映画作家としての僕の願いです。

■公開情報
『無頼』
5月16日(土)より、新宿K’s cinemaほか全国順次ロードショー
監督:井筒和幸
出演:松本利夫(EXILE)、柳ゆり菜、中村達也、ラサール石井、小木茂光、木下ほうか、升毅
配給:チッチオフィルム
配給協力:ラビットハウス
2020年/日本/146分/カラー/ビスタサイズ/5.1ch
(c)2020「無頼」製作委員会/チッチオフィルム 
公式サイト:www.buraimovie.jp
公式Twitter:@buraimovie

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