吉沢亮が継承する“倍返し”のスピリット 『半沢直樹』SPドラマは「信じる」がキーワードに

『半沢直樹』吉沢亮が継承する“倍返し”

 「やられたらやり返す。倍返しだ」の決めゼリフで、平成のドラマ史上最高となる視聴率(42.2%)を記録した日曜劇場『半沢直樹』(TBS系・2013年)。待望の再始動に先駆けて、スピンオフドラマ『半沢直樹Ⅱ エピソードゼロ 狙われた半沢直樹のパスワード』(TBS系)が1月3日に放送された。

 主人公の高坂圭(吉沢亮)はIT企業「スパイラル」に所属するプログラマー。半沢直樹(堺雅人)が出向を命じられた東京セントラル証券の新システム開発を進める中で、何者かが営業企画部長である半沢のパスワードを使って顧客情報にアクセスしようとしていることを知る。システムの稼働日が近づく中、高坂は同僚や東京セントラル証券の社員である浜村瞳(今田美桜)とともに疑惑の追及に乗り出す。

 本編のキャラクターがほとんど登場しない『エピソードゼロ』だが、そこかしこに『半沢直樹』の気配が感じられ、新シーズンへの期待を抱かせる放送となった。

 影のある主人公という点で半沢と高坂には共通項がある。優秀なプログラマーである高坂は、偏屈な性格で人を信じることができず、初対面の瞳にも「信じられるものなんて世の中にない」と話す。高坂がそうなったのは、学生時代に、とある事件で警察に逮捕されたことがきっかけだった。自分や家族を陥れた人間への怒りが原動力になっている半沢と、裏切られることを極度に警戒する高坂。「やられたらやり返すなんて馬鹿」、「やり返したらもっとやられるだけ」と考える高坂は、争いを避ける現代の若者の典型のように見えるが、半沢の生き方を知ることで逃げずに現実と向き合うようになる。

 高坂と対照的なのが瞳だ。新入社員の瞳は高坂が作った占いサイトを信じる楽天的な性格だが、理不尽なことに対して声を上げる向こう気の強さも備えている。瞳は会社の端末からインサイダー取引をしたことで上司から自宅待機を命じられる。実は、これは半沢のパスワードを使った300億円の横領事件について瞳に濡れ衣を着せるための策略だった。瞳から「やられたらやり返すという言葉には続きがある」と聞いた高坂は真犯人に反撃を仕掛ける。 

 『エピソードゼロ』は「信じる」がキーワード。仲間を信じることができない高坂に、同僚の若本(吉沢悠)や瞳は信じることの意味を問いかける。時代錯誤な精神論のようだが、本来、信じるという行為の起点には正しい情報が何かを見極めるという態度があったはず。高坂は若本や瞳に自分を信じてほしいと伝えることで、意外な黒幕をあぶり出した。主観そのもののような行為が、情報をめぐる攻防の行方に影響する『エピソードゼロ』は、復讐劇を基調とする人間ドラマの急所を突いていた。

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