喜美子と八郎の共同作業 『スカーレット』常治の秘技・ちゃぶ台返しを食い止める

『スカーレット』喜美子と八郎の共同作業

 八郎(松下洸平)が喜美子(戸田恵梨香)との交際を認めてもらうため、川原家へと赴くものの、むろん頑固オヤジ・常治(北村一輝)が首を縦に振ることはない。という以前に、門前払いだとか、すっぽかされたりだとかで、八郎は常治に会うことすらなかなか叶わなかった。

 連続テレビ小説『スカーレット』(NHK総合)第64話では、ようやく常治と対面を果たした八郎が、喜美子との結婚の許しを申し出る。

 あれだけ喜美子に「結婚しろ」と言っていたのに、いざその相手が目の前に現れると、あたふたする常治。目は泳ぎ、何をごまかそうとしているのか、おちゃらけてみせたりする。彼の中で喜美子はまだ「3才」の子どもらしい。どちらが子どもなのか。やれやれ。

 今回は喜美子の帰宅が遅くなってしまった。これまでにもそういったことは多々あり、そのたびに川原家では揉め事に発展していたが、今回は事情が違う。現在の喜美子には好きな人がおり、それを常治は知っている。彼はあらぬ妄想を膨らませ、喜美子が帰ってこないことに気を揉んでいるのだ。とはいえ、母のマツ(富田靖子)は落ち着いている。喜美子のことを信頼し、彼女の置かれている環境のことも信頼しているのである。

 そんなちぐはぐの両親が、まさかの駆け落ちで結ばれていたことが発覚。これを耳にした百合子(福田麻由子)は常治の「熱情が燃えたぎる」という言葉に反応し、「気色悪ぅ!」と猛烈なアレルギー反応を示す。まだ子どもの百合子にとって「熱情が燃えたぎる」という心情が理解できないのか、はたまた、父である常治がそんな言葉を口にすることが許せないのか……おそらく後者なのだろう。あまりの露骨な反応に、見ていてびっくりしてしまった。

 そこへ、八郎に見送られた喜美子が帰宅。照子(大島優子)の出産に立ち会っていたことを話し、もう夜も遅いからと、八郎は早々にその場を辞する姿勢を見せる。やはり彼は誠実な男だ。ところが、まさかの常治が八郎を呼び止め、「上がっていけば……」と声をかける。これは大きなチャンス。まだ八郎に可能性は残されている。しかし彼はどこまでもマジメな男。常治が終始うろたえる様子であるのに対し、彼はシリアスな態度で臨む。常治が秘技・“ちゃぶ台返し”を繰り出そうとすれば、喜美子とともに息ピッタリにすんでのところで食い止めるという見事な共同作業。そして身の上話をする八郎に対して常治は、「骨のある男」だと評する。

 だが常治が、若い二人が一緒になることに抱いている懸念は、八郎の「陶芸家になる」という夢に対してのようだ。彼いわく、社員として勤めている“商品開発室”じゃだめなのかということである。これをマジメな八郎は、“夢を持つな”ということだと受け取るが、そうではない。好きという気持ちだけではどうにもならないことがある。夢や希望だけで、ご飯は食べられない。常治は妻のマツに対して、苦労をかけてきたという自責の念に苛まれているらしい。まだ(彼の中で)3才の喜美子に、苦労してほしくないのだ。さあ、どう出る、八郎。

■折田侑駿
映画ライター。1990年生まれ。オムニバス長編映画『スクラップスクラッパー』などに役者として出演。最も好きな監督は、増村保造。Twitter

■放送情報
NHK連続テレビ小説『スカーレット』
NHK総合にて、2019年9月30日(月)~2020年3月放送予定
出演:戸田恵梨香、北村一輝、富田靖子、桜庭ななみ、福田麻由子、佐藤隆太、大島優子、林遣都、財前直見、マギー
水野美紀、溝端淳平、木本武宏、羽野晶紀、三林京子、西川貴教、松下洸平、イッセー尾形 ほか
脚本:水橋文美江
制作統括:内田ゆき
プロデューサー:長谷知記
演出:中島由貴、佐藤譲
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/scarlet/

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