『ニッポンノワール』脚本家・武藤将吾の歴代作品との繋がりに驚愕 新たな作家性の開花となるか

『ニッポンノワール』武藤将吾が仕掛けた遊び

 『ニッポンノワール-刑事Yの反乱-』(日本テレビ系、以下『ニッポンノワール』)は日曜夜10時30分から放送されているサスペンスドラマだ。

 警視庁捜査一課の刑事・遊佐清春(賀来賢人)は目を覚ますと見知らぬ小屋におり、横には何者かに射殺された上司の碓氷薫(広末涼子)の遺体が横たわっていた。手に銃を持ち、ここ3カ月の記憶を失っていた清春は、薫を殺害した最重要容疑者として疑われる中、事件の捜査をはじめる。同時に薫の息子・克喜(田野井健)を預かることになった清春は、薫を殺した犯人を追ううちに正体不明のガスマスクの男と戦うことになる。

 そして薫の殺害事件の背後に、薫たちが追っていた10億円強奪事件と半グレ集団・ベルムズ、そして「ニッポンノワール」と呼ばれる警察内部の地下組織が絡んでいることを知る。

 脚本は武藤将吾。今年(1~3月)同枠で放送され話題となった『3年A組 ―今から皆さんは、人質です―』(日本テレビ系、以下『3A』)を手掛けた、現在もっとも勢いのある脚本家だ。

 『3A』は、女子生徒の自殺の真相を探るためにクラスの生徒全員を人質にとり教室に立て籠もった教師を主人公にした異色の学園ドラマで、謎が謎を呼び、状況が二転三転していく超展開の連続によって視聴者を惹きつけた。

 この『ニッポンノワール』もサスペンス要素は健在だ。主人公の清春は「警視庁の癌」、「日本一の悪徳刑事」と呼ばれ警視庁では煙たがられているが、冷徹な性格と卓越した身体能力で事件に立ち向かう。

 他の刑事も奇人変人ぞろいで、毎週、ド派手なアクションが展開されるのだが、それ以上に面白いのが、謎が謎を呼ぶ陰謀論的なストーリー。そこに武藤将吾の過去作とのリンクが見られるのが、大変興味深い。

 そもそも、本作は放送前から『3A』と同じ世界観の物語だと明示されており、『3A』で起きた立て籠もり事件の半年後を舞台としている。劇中に登場する刑事や、架空の特撮ヒーロー・ガルムフェニックス、反グレ集団・ベルムズは『3A』にも登場しており、各話のゲストとして『3A』の高校生たちのその後が描かれている。つまり本作は世界観を共有する間接的な続編となっているのだ。

 この世界観の共有は、中核となるストーリーに深く絡んでいるというよりは、『3A』で魅力的だった世界観を再利用するという視聴者サービス以上のものではない。逆に言うと『ニッポンノワール』単体だけでも作品として成立しているので、作り手の“遊び”以上のものではないというのが現時点での印象だが、ちょっと驚いたのは、武藤が2010年にフジテレビ系で脚本を手掛けた刑事ドラマ『ジョーカー 許されざる捜査官』(以下、『ジョーカー』)の世界観まで、ストーリーとリンクさせてきたことだ。

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