『ニッポンノワール』脚本家・武藤将吾の歴代作品との繋がりに驚愕 新たな作家性の開花となるか

『ニッポンノワール』武藤将吾が仕掛けた遊び

 『ジョーカー』は、昼は温和で真面目な刑事・伊達一義(堺雅人)が仲間とともに夜になると法で裁けない悪人に怒りの鉄槌を下すという現代版『必殺仕事人』(テレビ朝日系)のような話だったが、犯人は殺さずに麻酔銃で眠らせた後、とある独房に監禁される。捕まった犯人たちは「神隠し」にあったと噂されていたのだが、その神隠しにあった男の一人が『ニッポンノワール』に登場する刑事・宮城遼一(細田善彦)だったことが、暗示されたのだ。

 これは『ジョーカー』第一話で演じた犯人役を、宮城を演じる細田善彦が演じていたことから起きたリンクなのだが、言うまでもなく『ジョーカー』はフジテレビ系、『ニッポンノワール』は日本テレビ系の制作である。

宮城遼一『ニッポンノワール-刑事Yの反乱-』(c)日本テレビ

 宮城(だった犯人)は神隠しにあった後、ニッポンノワールによって人格修正プログラムを施され、別人として生きていた。宮城は、両親を事故で亡くしたと思い込んでいたが、過去の記憶があやふやで半年前の「立て籠もり事件」のことも忘れていた。それは記憶を操作されていたからで、劇中でさらっと語られた月に一度、必ず通っているという警察学校の健康診断が人体実験の場だと知った時は、見事な伏線回収に驚いた。

 こういった世界観をリンクさせる作り方は『機動戦士ガンダム』等のSFテイストのアニメでは定番の手法だが、ドラマでは難しい。堤幸彦監督の『ケイゾク』、『SPEC』、『SICK’S』(それぞれTBS系)の三部作が目立つぐらいだ。

 キャラクターの絵柄や時間軸をコントロールできるアニメに対し、実写の場合、生身の人間ゆえに歳を取る役者のスケジュール調整や、放送局の壁が大きく、メディア展開がとても難しい。前述した『SICK’S』にも『ケイゾク』の主人公・柴田淳が登場するが、柴田を演じた中谷美紀は出演しておらず、顔を隠すという苦肉の作がとられていた。

 今回のリンクは、おそらく非公式のお遊びだろうが、『3A』と『ニッポンノワール』はともかく『ジョーカー』まで絡ませるということは、武藤はこの自作の世界観を統合しサーガ化していくのだろうか? 

 ただの“遊び”なのか、新たな作家性の開花となるのか。今後の展開に注目である。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

■放送情報
『ニッポンノワール ー刑事Yの反乱ー』
日本テレビ系にて、毎週日曜22:30~放送
出演:賀来賢人、広末涼子、井浦新、夏帆、工藤阿須加、佐久間由衣、立花恵理、田野井健、栄信、細田善彦、篠井英介、北村一輝
脚本:武藤将吾
チーフプロデューサー:西憲彦
プロデューサー:福井雄太 、柳内久仁子(AX-ON)
演出:猪股隆一
制作協力 : AX-ON
製作著作 : 日本テレビ
(c)日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/NNY/
公式Twitter:@NNY_ntv



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