『グランメゾン東京』 で天才を追いかける「努力の人」に 玉森裕太の“静かな演技派”としての実力

『グランメゾン東京』 玉森は“静かな演技派”

 『グランメゾン東京』でも玉森演じる平古はさまざまな葛藤を見せる。1番憧れ信頼している相手から認められない悔しさと、その存在を断ち切れない片思いのような心の揺れ。木村演じる尾花の“ツン”に“ツン”で対抗しつつ、心の底では“デレ”を求める切ない表情が秀逸だ。

 また、このドラマ上での関係性が現実のふたりにリンクするのも興味深い。トップアイドルとして世間の注目を一身に浴びてきた木村と、その背中を見ながら先輩に認められたいと走り続ける玉森。平古にとっても玉森にとっても『グランメゾン東京』は絶対に負けられない勝負の場なのである。

 さらに本作にはちょっと面白い趣向がある。それが平古視点で彼の日常が描かれるスピンオフドラマ『グラグラメゾン 東京』(Palavi)の配信。婚約中の美優の気持ちがわからなかったり、ホテルの厨房で部下たちにかつて自分が尾花に言われたのとそっくり同じ言葉をぶつけていたり、松井の前で酔っ払い愚痴を言ってみたりとドラマ本筋以外で展開する平古のサイドストーリーが興味深い(そしてその素顔は非常にキュート)。

 玉森裕太に見えるのは青い炎だ。赤く情熱的に燃える火ではなく、静かに高い温度で熱量を生み出す青い炎。トップに君臨する天才でなく、その天才の背を見つめながら挫折し、己の道を必死に拓こうとする努力の人。

 今後、ドラマの中でも平古の存在がひとつのキーワードになるのは間違いない。そこで玉森がどんな炎を魅せてくれるのか、物語の行方とともに注目したい。

■上村由紀子
ドラマコラムニスト×演劇ライター。芸術系の大学を卒業後、FMラジオDJ、リポーター、TVナレーター等を経てライターに。TBS『マツコの知らない世界』(劇場の世界案内人)、『アカデミーナイトG』、テレビ東京『よじごじDays』、TBSラジオ『サキドリ!感激シアター』(舞台コメンテーター)等、メディア出演も多数。雑誌、Web媒体で俳優、クリエイターへのインタビュー取材を担当しながら、文春オンライン、産経デジタル等でエンタメ考察のコラムを連載中。ハワイ、沖縄、博多大吉が好き。Twitter:@makigami_p

■放送情報
日曜劇場『グランメゾン東京』
TBS系にて、10月20日(日)スタート 毎週日曜21:00~21:54
出演:木村拓哉、鈴木京香、玉森裕太(Kis-My-Ft2)、尾上菊之助、及川光博、 沢村一樹
脚本:黒岩勉
プロデュース:伊與田英徳、東仲恵吾
演出:塚原あゆ子ほか
製作著作:TBS
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/grandmaisontokyo/

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