『G線上のあなたと私』3人の唯一無二の関係性に変化が 進むためにもがく波瑠から学ぶこと

『G線上のあなたと私』もがく波瑠から学ぶこと

 そんなものが見つかると思っている自分が甘いのだろうか。たった半年バイオリンをかじっただけで、音楽が好きだというのはぬるいのだろうか。半年前、婚約破棄をされて傷ついて、復讐と憎悪の象徴に聴こえた「G線上のアリア」は今、也映子にとって友情と再生のテーマソングに変わりつつある。「音楽に救われた」とはつまり、その音楽を通じて出会った何かを好きになったということ。

 バイオリンを弾けるようになりたい、という前向きな自分を好きになれたこと。その悶々とした気持ちを吐露できる仲間を好きになれたということ。憧れるような演奏ができる師を好きになれたこと。好きになった喜びを、その曲を聴くたびに心の中でリピート再生することができる。

 私たちは、結局「好き」で傷つき、「好き」で救われている。「好き」を集めて人生を生きているはずなのに、気づけばその「好き」が自分を窮屈にしていることもある。誰かを暴力的に傷つけていることもある。

 だから、今の環境で息苦しいときには、きっと新たな「好き」を必要としているサインなのではないか。街で聴こえた音色に、出先でふと目が合った人に、声をかけ、飛び込み、ぶつかってみる。そんな勇気が、「友だちが減っていく」大人にこそ、必要なのかもしれない。もしかしたら、そこから一生の友に巡り会えるかもしれないし、思わぬ恋だって生まれるかもしれない。さらには、今まで持っていた「好き」を改めて「好き」になることも。そして、仕事、家庭、趣味……と入れ込めるモノへと繋がっていくのかもしれない。

 自分にもそうした出会いが待っているのではないか。一歩踏み出してみれば……というエモーショナルな気持ちになるのが、このドラマの魅力だ。日常に少しだけ時間を作って、いつもとは違うアンテナを張ってみようではないか。

 「私だってね、頑張ってるんですよ。諦めてないんですよ、何一つ!」。そう、私たちは何一つ諦める必要なんてない。カッコ悪いを突き詰めれば、その姿勢そのものがカッコ良くなるのだから。必死にバイオリンを弾こうと努力する姿がカッコ悪くて、カッコいいのと同じように。

(文=佐藤結衣)

■放送情報
火曜ドラマ『G線上のあなたと私』
TBS系にて、毎週火曜22:00~22:57放送
出演:波瑠、中川大志、松下由樹、桜井ユキ、鈴木伸之、滝沢カレンほか
原作:いくえみ綾『G線上のあなたと私』コミックス全4巻(集英社マーガレットコミックス刊)
脚本:安達奈緒子
演出:金子文紀、竹村謙太郎、福田亮介
チーフプロデューサー:磯山晶
プロデューサー:佐藤敦司
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/gsenjou/

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる