ギャスパー・ノエ監督が語る、『CLIMAX クライマックス』の舞台となった1996年と時代の変化
「冒頭のダンスシーンは集団的なパワーによって作られた」
ーー冒頭の圧巻のダンスシーンをはじめとする動きのあるシーンと、ゆっくりじわじわと進んていくスローなシーンの対比が印象的でした。
ノエ:一番最初のダンスシーン以外は全て即興だった。最初から、今回は即興で静と動の両方を入れ替わり立ち替わり撮っていこうという方針があったんだ。最初のダンスシーンに関しては、撮影の3日前に振付師に現場に入ってもらって、自分が選んだダンサーたちと振り付けを考えて、2日はリハーサルに時間を費やした。その2日間は僕は不在で、振付師とダンサーだけでリハーサルをやってもらったんだ。だから、僕は撮影当日に合流して、そのまま撮影に入ったわけなんだ。僕が現場に入ってからカメラやクレーン、そしてダンサーたちの動きを最終確認して、撮影に臨んだ。冒頭のダンスシーンは結局15テイクぐらい撮ったかな。カメラの動きを含めての映像になるわけだから、最初の10テイクぐらいはあまり満足できなかったんだけど、10テイクを過ぎたあたりからだんだんよくなっていって、最終的にシーンが完成した。だから、あのシーンは僕が関与したのは技術的な面だけで、ほとんどは振付師とダンサーたちによって作られたものなんだ。要するに、彼らたちの集団的なパワーが、あのインパクトなシーンを作り上げたと言っても過言ではないよ。
ーー冒頭のダンスシーンで流れるセローンの「Supernature」もそうですが、『エンター・ザ・ボイド』に続いてのコラボとなるトーマ・バンガルテルをはじめ、ダフト・パンクやエイフェックス・ツインなど使用されている音楽も映画に大きな効果を与えています。
ノエ:ダフト・パンクは本当に大好きだし、今回は自分が好きな曲しか使っていないんだ。特に、ダフト・パンクの「Rollin’ & Scratchin’」と、エイフェックス・ツインの「Windowlicker」は、今まで何回聴いたかわからないぐらいだし、ずっと踊っていられるような楽曲だね。トーマ(・バンガルテル)とは今回が3度目のコラボレーションになるけれど、彼の曲とダフト・パンクの曲が使えなかったらこの映画は完成しなかったんじゃないかな。トーマには、1995年から1996年にかけて作った楽曲で、まだタイトルさえない、世に出ていないものが何曲かあったんだ。それを聴いて僕はすごくいいなと思って、トーマに使用許可をもらったんだ。その時聴いたままの楽曲ではなく、リミックスしてもらったんだけどね。それが今回使った「Sangria」という曲だよ。「What To Do」もすごくよかったから、ぜひ使いたいと思って使わせてもらったんだ。トーマは僕にとって友人の1人でもあるから、今回のようなラッキーな使い方ができたと思っているよ。
(取材・文・写真=宮川翔)
■公開情報
『CLIMAX クライマックス』
ヒューマントラストシネマ渋谷ほかにて公開中
監督・脚本:ギャスパー・ノエ
出演:ソフィア・ブテラ、ロマン・ギレルミク、スエリア・ヤクーブ、キディ・スマイル
配給:キノフィルムズ/木下グループ
2018/フランス、ベルギー/スコープサイズ/97分/カラー/フランス語・英語/DCP/5.1ch/日本語字幕:宮坂愛/原題『CLIMAX』/R-18
(c)2018 RECTANGLE PRODUCTIONS-WILD BUNCH-LES CINEMAS DE LA ZONE-ESKWAD-KNM-ARTE FRANCE CINEMA-ARTEMIS PRODUCTIONS
公式サイト:http://climax-movie.jp/