是枝裕和監督の切実なる願いが結晶 『真実』は映画と人間の幸福な関係を描く

『真実』が描く、映画と人間の幸福な関係

 「澄んだ空を見上げて終わる」それだけを決めていたーー。と、是枝監督は語る(参照:https://wotopi.jp/archives/92665)。その言葉通り、『真実』の家族は秋の澄んだ空を見上げるが、『万引き家族』(2018年)の家族は、花火の見えない夏の夜空を見上げる。『万引き家族』のその場面では、家族が空を見上げるショットの次のショットで、再び家族の姿がより俯瞰で映し出される。つまり是枝監督は、「見てごらん」と父が空を指差すにもかかわらず、彼らの視線の先である空を映す切り返しショットになりそうなところをそうはせず、あくまで家族の姿を映し続ける。そうすることによって、私たちは彼らが見上げる空ではなく、空を見上げる彼らの姿を見つめ続けることとなる。そしてそれは本作でも踏襲されている。是枝映画において、同じ空を見上げることは家族が一つになることであり、見つめ続けていたいかけがえのない瞬間であるように思える。

 是枝監督はかつて、自身のエッセイ本『映画を撮りながら考えたこと』のなかで「時代や人の変化を追いかけるのではなく、自分たちのささやかな暮らしから物語を紡ぐことをしたい」と語った。映画『真実』は、そんな切実なる願いが結晶している。

■児玉美月
大学院ではトランスジェンダー映画についての修士論文を執筆。
好きな監督はグザヴィエ・ドラン、ペドロ・アルモドバル、フランソワ・オゾンなど。Twitter

■公開情報
『真実』
TOHOシネマズ 日比谷ほかにて公開中
原案・監督・脚本・編集:是枝裕和
出演:カトリーヌ・ドヌーヴ、ジュリエット・ビノシュ、イーサン・ホーク、リュディヴィーヌ・サニエ
撮影:エリック・ゴーティエ
配給:ギャガ
(c)2019 3B-分福-MI MOVIES-FRANCE 3 CINEMA
公式サイト:gaga.ne.jp/shinjitsu/



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