黒木華と高橋一生が母親と対峙する 『凪のお暇』それぞれの“お暇”に出口が

『凪のお暇』黒木華と高橋一生は母親と対峙する

 親にひどいことを言ってしまった。家族に失礼な態度をとってしまった……自分の思うままに行動したことに、やはり罪悪感を抱かずにはいられないふたり。根本では変わることができない。だが、行動次第で環境を変えることはできる。自分をわかってくれる人がいるということ。そして大声で泣くほど、みっともない姿を見せられる人が、この世に1人でもいるという心強さ。取り繕っていいところを見せる何百人と、どちらと共に生きていくのが楽しいのか、ということだ。

 思えば、アパート・エレガンスパレスの住人たちは、それぞれに“お暇“を取っていたようにも見える。うらら(白鳥玉季)は友だちにいい生活しているのだと嘘をついて現実逃避をしていたし、緑(三田佳子)は家も結婚も捨てて何十年も身を潜めていた。ゴンも恋愛の本質とは向き合わずに、多くの女性たちの間を浮遊してきた。

 さらに凪に導かれるように、パワーストーンを心の拠り所にしてきた龍子、そして嘘だらけの家族をまとめていた慎二までもが、いつのまにかエレガンスパレスに入り浸る。すんなりお互いを受け入れられたのは、それぞれが世間一般から求められる“正解“から逃げてきたからかもしれない。このままではいけないと思いながらも、どうしたらいいかわからずにいる同じ穴のムジナ。

 だが、そんなそれぞれの“お暇“も、そろそろ出口が見えてきた。緑は、全てを押し付けた故郷の妹との再会を決意。龍子は、大事なパワーストーンのブレスレットを緑に貸す。ここでもまた誰かを支えることで、1つの成長を迎えていく。そして、ゴンは女性たちから合鍵を回収し、凪に告白をする。そして、慎二と凪は……。

 最も早く“お暇“の出口に立ったのが、小学生のうららというのも、この物語の面白いところだ。空気を読まない子供のほうが、自分を縛っていたしがらみから抜け出せるということなのだろうか。「そんなの簡単じゃん、友だちになればいいんだよ」と。

 確かに、関わる全ての人と、友だちになれるのは理想だ。家族だからといって依存せず、恋人だからといって執着せず、それぞれが基本的には自分のことは自分でなんとかする。その上で励ましったり、手を取り合ったりして生きていく。そんな対等でフラットな関係性。
年齢も、性別も、仕事も、背景も、収入も……大人になるほど共通項が減って、バラバラになっていく。そして、目の前の人と友だちになることよりも、自分のいいところを見せたいと必死になりがちだ。もしかしたら『凪のお暇』は、友だちの作り方を忘れてしまった大人の“夏休み“の宿題なのかもしれない。

(文=佐藤結衣)

■放送情報
金曜ドラマ『凪のお暇』
TBS系にて毎週(金)22:00~22:54放送
出演:黒木華、高橋一生、中村倫也、市川実日子、吉田羊、片平なぎさ、三田佳子、瀧内公美、大塚千弘、藤本泉、水谷果穂、唐田えりか、白鳥玉季、中田クルミ、谷恭輔、田本清嵐、ファーストサマーウイカ、武田真治
原作:コナリミサト『凪のお暇』(秋田書店『Eleganceイブ』連載)
脚本:大島里美
演出:坪井敏雄、山本剛義、土井裕泰
プロデューサー:中井芳彦
製作著作:TBS
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/NAGI_NO_OITOMA/

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