岩松了、“そっくり”岸清一として日本スポーツの礎に 『いだてん』の緻密な史実へのアプローチ

岩松了、“そっくり”岸清一として日本スポーツの礎に 『いだてん』の緻密な史実へのアプローチ

 『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~』(NHK総合)第32回「独裁者」が8月25日に放送された。国際世論が満州事変を非難し、日本はそれに反発。国際連盟を脱退したことで孤立した日本と、ドイツのヒトラー、イタリアのムッソリーニという2人の独裁者の存在がこれから起こる出来事への不穏さを醸し出す。そんな中、治五郎(役所広司)らは粘り強くオリンピック招致に力を注ぎ続けていた。今回は東京へのオリンピック招致を現実に近づけた人物、そしてオリンピックへの新たな希望に焦点が当てられた。

 岸清一(岩松了)は、治五郎と共に日本のスポーツ界発展のため力を尽くした人物だ。岸はオリンピック招致の瞬間を見ることができずに生涯を終えるが、最期の瞬間まで岸からはスポーツ愛があふれていた。東京市長の永田(イッセー尾形)が銀メダルを獲得した前畑(上白石萌歌)に対して「なぜ金メダルをとってこなかったんだね」と落胆の声をあげたとき、岸は選手たちが抱えてきたプレッシャーや悔しさを思い、市長に怒りを露わにする。昭和天皇へのご進講という大役を任されたときには、政治(阿部サダヲ)らにそのときの様子を嬉しそうに語っていた。イキイキとした表情が印象的な岸だが、オリンピックやスポーツにはじめから肯定的だったわけではない。

 1912年に開催されたストックホルムオリンピック後、財政難にあえいでいた大日本体育協会(以下、体協)を立て直すために登場した岸。治五郎の後を継ぎ、体協の第2代会長になるも、スポーツへの関心は治五郎に比べると今ひとつといった印象だった。この頃の岸を演じる岩松の表情は厳しく、オリンピックのこととなると感情が昂ぶる治五郎とは正反対の存在だった。

 ところが、第19回「箱根駅伝」で岸のスポーツへの考えが変わる。オリンピック代表選手の選考を兼ねた箱根駅伝で、ゴールする選手たちの姿を見た岸は涙を流して選手たちを讃えた。この回以降、岸は相変わらず財政には厳しい姿勢を保ちながらも、ことあるごとに「男泣き」する姿を見せる。岩松の見せる表情は徐々に豊かになっていき、それはまるで岸の心の中で日に日に膨らんでいくスポーツ愛を表しているかのようだった。

 はじめからオリンピックに肯定的なキャラクターには治五郎がいる。しかし岸は治五郎とは違った角度からスポーツの魅力を知り、スポーツ愛に目覚めていった。そんな岸がいたからこそ、スポーツが日本にまだ浸透していなかった頃からオリンピック招致のために国全体が動き出すまでを、視聴者がリアルに感じられたとも言えるだろう。

 SNS上では、岸清一本人と岸を演じる岩松了の顔がそっくりだと話題になっていた。公式ツイッターによると、岩松自身も「顔が似てると言われて、その気になった私でした」とコメントしている。また劇中、岸が左の瞼だけ二重になることを気にするコミカルなシーンがあった。シリアスな展開の中に散りばめられた笑いの演出かと思われたが、視聴者の間で「実際の岸清一も左瞼だけ二重になっている」と話題に。史実であり、実在の人物が多数登場する本作だが、作り手たちが綿密なリサーチを行い、いかに誠実に向き合っているかが、このような物語の端々に垣間見ることができる。

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