『ロケットマン』監督が明かす、『ボヘミアン・ラプソディ』との違いとエルトン・ジョンへの共感

『ロケットマン』監督が語る

「エルトンが辿ってきた道のりが、まるで自分が辿ってきたかのよう」

ーーエルトン・ジョン自身の人生の自由さがこの作品にも表れているということですね。

フレッチャー:誰にだって、不機嫌になってしまったりイライラしてしまったり、気持ちの浮き沈みがあるもの。そういう時に、やってはいけないことに手を出してしまうことも少なからずあると思う。普通は誰も見ていないところでやるけれども、エルトンの場合はそれが表に出てしまうだけで、その点では僕たちと何も変わらない一人の人間なんだ。僕はそういうことをこの映画で伝えたかったし、エルトン自身もそうだった。暗い部分や、人にあまり見せたくない部分を含めて描くことで、一辺倒で表面的な映画にならなくてすんだところもあるかもしれない。僕自身もそんな映画にするつもりは毛頭なかったし、彼自身もそういう映画にはしてほしくないとハッキリ言っていたからね。だって、そんな映画は開始10分で飽きてしまうだろ?(笑)。 “こだわり”と言うのであれば、エルトンにとっても僕自身にとっても、ひとつの側面だけではなくて、悪い部分も良い部分も含めて多層的に全てを表現することだったね。

ーーあなたの映画界でのキャリアは、子役として『ダウンタウン物語』(1976年)に出演したところからスタートします。その後、父と息子の葛藤を描いた人間ドラマ『ワイルド・ビル』(2011年)で監督デビューを果たし、2作目の『サンシャイン/歌声が響く街』(2013年)ではミュージカル、3作目の『イーグル・ジャンプ』では伝記ものに挑戦しました。『ボヘミアン・ラプソディ』も含めて、キャリアの全てがこの『ロケットマン』に通じているようですね。

フレッチャー:本当にその通りだよ。1作目の人間ドラマ、2作目のミュージカル、3作目の伝記ものという3つの要素が全部重なり合ったという意味で、全てはこの『ロケットマン』のために道が築かれてきたんじゃないかという運命的なものを感じるよね。それに、実は僕自身、エルトンと共通する部分がすごくあるんだ。子役としてデビューした僕は若い年齢で大きな富や名声を全て手に入れた。だけど、エルトン同様に僕もその全てをドラッグに使い込んでしまった。自分で自分を破滅に追い込んでしまった経験が僕にもあったんだ。だから、エルトンが辿ってきた道のりが、まるで自分が辿ってきたかのように、しみじみと共感できるわけなんだ。最近の若い人たちは、InstagramやTwitterの「いいね」をもらうことが名声だと思っているようだけど、多くの人たちは名声にはどれだけの代償や犠牲が伴うのかを何もわかっていない。この作品のテーマ自体がそこにあるわけではないけれど、そういうことを含めて考えさせらるような作品になっていれば嬉しいね。

(取材・文・写真=宮川翔)

■公開情報
『ロケットマン』
全国公開中
出演:タロン・エジャトン、ジェイミー・ベル、ブライス・ダラス・ハワード、リチャード・マッデン
監督:デクスター・フレッチャー
脚本:リー・ホール
製作:マシュー・ヴォーン、エルトン・ジョン
配給:東和ピクチャーズ
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