『いだてん』菅原小春が体現した人見絹枝の魂 女子スポーツの未来を切り拓いた銀メダル

『いだてん』菅原小春が人見絹枝の魂を体現

 800メートル走本番。アドバイスに従い、スタミナを温存しながら走った絹枝は徐々に順位をあげるが、経験したことのない距離が彼女を苦しめる。そんな彼女に野口らが声をかける。「足が重くなったら腕を振りたまえ」。懸命に腕を振り、前へ前へと進む絹枝。倒れるようにしてゴールした絹枝は世界新記録を樹立。銀メダルを獲得した。

 本作が演技初挑戦だという菅原の高い表現力に圧倒される。コンプレックスを抱える絹枝の表情と陸上に向き合う絹枝の表情は、1人の女性でありながら全く違う印象を与えるものだった。そしてダンサーである菅原にしかできない身体表現が、絹枝の熱い思いを視聴者に伝える。疾走する絹枝の苦しげな口元、まっすぐ前を見据えた目、大きな腕の振り、力強い走り。菅原の全身全霊の演技から、メダルを必死に勝ち取ろうとする執念が伝わってくる。

 絹枝は24歳という若さで生涯を終える。だが、彼女が心ない野次やプレッシャーをはねのけ、走り続けたからこそ今の女子スポーツがある。彼女をスポーツの世界に呼び寄せたシマ(杉咲花)やトクヨの存在も忘れてはならない。「800メートル走を走りたい」という絹枝を支えた野口や男子選手たちのことも。絹枝と絹枝を支えた人々の「明日なき暴走」は、女子スポーツの未来を変えたのだ。

■片山香帆
1991年生まれ。東京都在住のライター兼絵描き。映画含む芸術が死ぬほど好き。大学時代は演劇に明け暮れていた。

■放送情報
『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~』
[NHK総合]毎週日曜20:00~20:45
[NHK BSプレミアム]毎週日曜18:00~18:45
[NHK BS4K]毎週日曜9:00~9:45
作:宮藤官九郎
音楽:大友良英
題字:横尾忠則
噺(はなし):ビートたけし
出演:阿部サダヲ、中村勘九郎/綾瀬はるか、麻生久美子、桐谷健太、斎藤工、林遣都/森山未來、神木隆之介、夏帆/リリー・フランキー、薬師丸ひろ子、役所広司
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/idaten/r/

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