「無名新人」なぜ主役に? 視聴者と作り手に刺激をもたらす“新たな原石”に注目

「無名新人」なぜ主役に?

 このように、無名の新人俳優をメインのほうに置き、脇を経験豊富な役者で固める手法は、ときどき用いられる。

 記憶に新しいのは、『中学聖日記』(TBS系)で、有村架純演じる教師と禁断の恋に落ちる中学生を演じた岡田健史だろう。

 大人びた見た目に、追い付かない心の幼さを持つ、アンバランスで純粋な少年。本格的な演技は初体験だった岡田は、まだたどたどしさもあり、それがかえって少年から大人に変わる時期の混乱や苛立ち、青さ、不安定さ、危うさを感じさせ、鮮烈な印象を与えた。

 テクニックでこなせる経験値がないからこそ、口をついて出る言葉にも表情にも嘘がなく、「芝居」している感がないのは、このドラマの大きな魅力となっていた。

 映画畑では、新人俳優を好んで使う監督もいる。

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 例えば、園子温。『愛のむきだし』で見せた満島ひかりの狂気をはらんだ野性味あふれる演技には、監督自身も圧倒されたと語っている。『ヒミズ』の二階堂ふみの演技は、怖さや不気味さ、痛さを感じるほどに生々しかった。

 また、世界的に高い評価を受ける河瀬直美監督の起用方法は、独特だ。

 有名な例でいえば、実力派女優として知られる尾野真千子。彼女は、『萌の朱雀』で14歳のときに主演デビューしたが、中学校で靴箱の掃除をしたときに河瀬監督の目にとまったことがきっかけだったという。

 俳優・村上淳と歌手・UAを両親に持つ村上虹郎も、『2つ目の窓』で主演デビューしたときには、全くの素人だった。河瀬監督の場合は撮影方法も独特で、主演の俳優は、その人物としてその空間を生きるために、撮影の1~3週間くらい前から住み込む。また、撮影前に「用意スタート」とは言わず、役者にはいつカメラがまわっているかわからない状態で動いてもらうというスタイルをとっている。

 『万引き家族』がカンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した是枝裕和監督も、演技経験がない新人を多く起用するが、子役に台本を渡さず好きに動いてもらうスタイルをとることは、有名な話だ。

『万引き家族』(c)2018フジテレビジョン ギャガ AOI Pro.

 いずれも演技経験がない新人で、「芝居する」のではなく、その役を生きる手法をとっているため、リアルな表情が引き出され、それが大きな魅力となっている。

 『腐女子、うっかりゲイに告(コク)る。』(NHK総合)でナチュラルな演技を見せた藤野涼子も、『ソロモンの偽証』のオーディションで選ばれ、主演デビューした例だ。

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