“西島秀俊+エプロン”が救世主に!? 『きのう何食べた?』などで見せる癒し系へのシフトを振り返る

西島秀俊、癒し系へのシフトを振り返る

『名探偵ピカチュウ』(c)2019 Legendary and Warner Bros. Entertainment, Inc. All Rights Reserved. (c)2019 Pokemon.

 そして、映画『名探偵ピカチュウ』(日本語吹き替え版)でピカチュウを演じたところで、 西島秀俊が発する“エモさ”がピークに達した感がある。CGになったピカチュウはモッフモフの黄色い毛並みで、顔をクシャっと歪めるときもキュートな、まさに生きたぬいぐるみ。だが、「おっさんで名探偵」というキャッチコピーがあるとおり、中身はおじさん。図々しく、自信過剰で情けない。女子にあごをなでられて「オオオ、気持ちいい」と声を震わせるなど、「俺は真実を知りたいだけだ!」と叫んでいた公安路線のクールなイメージと比べれば「ここまでやるか」と驚くほどのギャップ。しかし、この吹き替えキャストは、モテ要素のない完全なるおじさんだったら、成功しなかっただろう。年齢的にはおじさんだがかっこよくて愛嬌のある西島秀俊が演じるから、そのイメージがプラスされて、かわいい!と騒いでもらえるのだ。

『空母いぶき』(c)かわぐちかいじ・惠谷治・小学館/『空母いぶき』フィルムパートナーズ

 映画の最新作『空母いぶき』では、信念を貫く艦長役。秋公開の『任侠学園』では暴力団の幹部を演じるが、そこでも強面な顔だけではなくソフトな笑顔も見せる。ツンデレキャラがハマり、はにかんだ笑顔で魅了する、そんな在り方が、海外の俳優に例えるなら、35歳を過ぎてから世界的にブレイクし50歳で米アカデミー賞を獲得した英国人俳優コリン・ファースのようだ。年齢を重ねても、いや、むしろ年を取れば取るほど「かわいい」と言われて愛される。それは演技だけではどうにもならない、天性のものだろう。4月クールのドラマでは、彼と年齢の近い俳優が“いいひと”を演じているが、なりきれていないのを見ても、西島秀俊のような人は他にはいないことを実感する。主演作がこれだけ続いているのも納得。つまり、彼が付けるエプロンは、“いいひと”コスプレをするために取って付けたものではなく、もともと彼が持っていたものなのだ。

■小田慶子
ライター/編集。「週刊ザテレビジョン」などの編集部を経てフリーランスに。雑誌で日本のドラマ、映画を中心にインタビュー記事などを担当。映画のオフィシャルライターを務めることも。女性の生き方やジェンダーに関する記事も執筆。

■放送情報
『きのう何食べた?』
テレビ東京系にて、毎週金曜深夜0:12〜放送
※テレビ大阪は翌週月曜深夜0:12〜放送
原作:よしながふみ『きのう何食べた?』(講談社『モーニング』連載中)
主演:西島秀俊、内野聖陽、マキタスポーツ、磯村勇斗、チャンカワイ、真凛、中村ゆりか、田中美佐子、矢柴俊博、高泉淳子、志賀廣太郎、山本耕史、磯村勇斗、梶芽衣子
脚本:安達奈緒子
監督:中江和仁、野尻克己、片桐健滋
チーフプロデューサー:阿部真士(テレビ東京)
プロデューサー:松本拓(テレビ東京)、祖父江里奈(テレビ東京)、佐藤敦、瀬戸麻理子
OPテーマ:「帰り道」O.A.U(OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND)<NOFRAMES / TOY’S FACTORY>
EDテーマ:「iをyou」フレンズ<ソニー・ミュージック・レーベルズ>
制作:テレビ東京/松竹
製作著作:「きのう何食べた?」製作委員会
(c)「きのう何食べた?」製作委員会
公式サイト:https://www.tv-tokyo.co.jp/kinounanitabeta/
公式Twitter:@tx_nanitabe

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