躍進続く長澤まさみの女優人生 『キングダム』『コンフィデンスマンJP』で引き出しの多さを見せる
役柄の幅を広げ、ワクワクする女優へ
さらに2017年上演された松尾スズキ演出のミュージカル『キャバレー』では、大胆な衣装を身にまとい、サリー・ボウルズ役を熱演。妖艶な佇まいを持ちつつも、長澤の持つ清廉さもしっかり活かされており、自らの持つパーソナリティを役柄に落とし込むことができる女優という印象を持った。その後も、NHKの大河ドラマ『真田丸』(2016年)で演じた“きり”や、黒沢清監督の『散歩する侵略者』の怒れる妻・加瀬鳴海など、一筋縄ではいかないキャラクターを演じ、役柄の幅を広げていった。
このころには、出演作が発表される際「こんな役なんだろうな」と想像できる女優から「どんな役をやるのだろう」と次回作がワクワクする女優という評価になった。そんなか、現在公開中の映画『キングダム』では、山の民を束ねる女王・楊端和を好演。その圧倒的な存在感と美しさは、これまでの長澤に「力強さ」という新たなイメージを植え付けた。
『コクリコ坂から』『君の名は。』“声”の演技
また長澤を語るうえで欠かせないのが“声”の演技の説得力だ。声優として2011年に公開された『コクリコ坂から』で主人公・松崎海や、2016年に公開され歴史的大ヒットを遂げた『君の名は。』では、主人公のアルバイトの美人でお洒落な先輩・奥寺ミキの声を担当し、素朴ながらも物語の世界観にピッタリとはまる表現力の高さを見せていたが、長澤自身も、以前のマネージャーから「女優は一に声、二に顔、三に姿」という言葉を教わり、女優という仕事をする上で、声のトーンが果たす役割はとても大切だと意識しているとインタビューで話していた。前述した『世界の中心で、愛をさけぶ』でも、劇中、カセットテープによる交換日記の長澤の語りは、圧倒的な存在感と表現力だった。“声”という視点で長澤を見ると、また違った趣が感じられる。