『名探偵ピカチュウ』最大のキモは完璧に実写化されたポケモンたち 1種ごとに異なったアプローチ

『名探偵ピカチュウ』ポケモンを完璧に実写化

 もちろん、本作には短所もある。強引な箇所や、「人間」の話が若干弱いのも目立つ。しかし、人間とポケモンが一緒に生きる世界を完璧に実写化しているのは間違いない。これはメディアミックスの1つの成功例として、今後も多くの作品に影響を与えることになるだろう。『ポケモン』を実写にするという命題に対し、真摯に向き合った力作だ。そのあまりの真摯さに、私は反省した。

 かつての私は困った少年であった。ポケモンの大会に出てポケモンの「自爆」を多用するなど、ポケモンを「駒」扱いする戦術で勝ち上がり、決勝前の意気込みを聞かれた際には「勝つためなら手段は選ばない」と明言して司会者のお兄さんを困らせた。そういった斜に構える態度がカッコいいと思っていたというか、悪役っぽく振る舞うのが好きだったからだ(なお決勝で負けた)。そんな暗い過去が、本作のエンドロールが流れる頃、きれいさっぱり洗い流された。「ポケモンは駒なんかじゃない。可愛い友達なんだ……」実写で動き回るポケモンたちを観ていると、やっと自分に正直になれた気がした。ピカチュウ、可愛いですよ。やっぱり。

■加藤よしき
昼間は会社員、夜は映画ライター。「リアルサウンド」「映画秘宝」本誌やムックに寄稿しています。最近、会社に居場所がありません。Twitter

■公開情報
『名探偵ピカチュウ』
全国公開中
監督:ロブ・レターマン
出演:ライアン・レイノルズ、ジャスティス・スミス、キャスリン・ニュートン、渡辺謙、ビル・ナイ、リタ・オラ、スキ・ウォーターハウス
吹替:竹内涼真(ティム役)、飯豊まりえ(ルーシー役)
配給:東宝
(c)2019 Legendary and Warner Bros. Entertainment, Inc. All Rights Reserved.
(c)2019 Pokemon.
公式サイト:https://meitantei-pikachu.jp/

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