「平成ライダー」が挑戦し続けた多種多様な作風 来るべき「令和ライダー」に向けて
そうして、話は冒頭に辿り着く。2018年公開『平成仮面ライダー20作記念 仮面ライダー平成ジェネレーションズ FOREVER』では、翌年に控えた改元による「平成ライダー」の終わりを重厚に描き、総勢20人の「平成ライダー」が銀幕狭しと活躍を繰り広げた。佐藤健のサプライズ出演も話題になるなど、ファンに向けた感謝が詰め込まれた一作となっている。まさに「平成ライダー」の、感動のフィナーレである。
また、最新作『仮面ライダージオウ』は、時を行き来し、「平成ライダー」の歴史を総括する物語を展開している。昨年末の放送では「ライドヘイセイバー」という剣型の武器が登場。デザインされた時計の針を回転させることで、『仮面ライダークウガ』から始まる全ての平成ライダーを選択することができる。必殺技を発動させる際には、待機音声で「ヘイ!セイ!ヘイ!セイ!」というノリの良いサウンドが流れるなど、まさに「平成ライダー」というブランドを象徴するようなアイテムだ。このような特異な武器が劇中に登場できるのも、同ブランドが辿った約20年の成果と言えよう。
平成という二文字は、約30年前から、「新しいもの」というニュアンスを含んできた。それは、昭和に対するカウンターとして、もしくは、新たな時代への希望を込めて、人々が自然に用いてきたものである。同じ経緯で生まれた「平成ライダー」という呼称は、いつしか他でもない本家本元がその看板を掲げ、作品のタイトルや武器の名前にまで登場するようになった。通俗的な呼称を取り込み、それすらも自らのアイデンティティとして確立させていく様子は、「平成ライダー」が常に模索し挑戦してきた多種多様な作風やメディア展開にも通じている。
この約20年、「平成ライダー」が作品を積み重ねてきたその背景には、同シリーズが決して欠かさなかったアグレッシブな姿勢があるのだ。仮面ライダーという概念を本家本元が覆し、またその結果すらも覆していく。旧来の価値観では一見すると仮面ライダーと思えないようなヒーローが、その精神を体現していく。「平成ライダー」の呼称が大々的に用いられるようになった経緯は、まさにその攻めの姿勢の象徴とも言えよう。
放送中の『仮面ライダージオウ』では、平成から令和にまたがる二週を用いて、「継承」「世代交代」をテーマにした物語が展開された。「平成ライダー」は名実ともに終わりに向かっているが、来るべき「令和ライダー」の活躍を、ファンは楽しみに待っているのである。今度は、どのようなアプローチで元号を扱ってくれるのだろうか。仮面ライダーの歴史は今まさに、ふたつの時代を飛び越え、新しい挑戦を迎えている。
■結騎了
映画・特撮好きのブロガー。『別冊映画秘宝 特撮秘宝』『週刊はてなブログ』等に寄稿。
ブログ:『ジゴワットレポート』/Twitter
■放送情報
『仮面ライダー ジオウ』
テレビ朝日系にて、毎週日曜日9:00~放送
監督:田崎竜太ほか
出演:奥野壮、押田岳、大幡しえり、渡邊圭祐、佐久間悠、板垣李光人、兼崎健太郎、生瀬勝久ほか
原作:石ノ森章太郎
脚本:下山健人ほか
公式サイト:https://www.tv-asahi.co.jp/zi-o/