『翔んで埼玉』若松央樹Pが明かすヒットの要因 宣伝のストーリー&こだわりの配役が功を奏す

『翔んで埼玉』プロデューサーが語るヒットの要因

「最初はやはり企画も難航しました」

ーー原作は1980年代のもので、数年前に復刻版によりSNSを中心に盛り上がりましたが、映画化に動き出したのはいつ頃でしょうか?

若松:実は、僕は武内監督とはTVドラマからの古い仲で、『電車男』で初めてご一緒して、その後『のだめカンタービレ』などもやっていました。そのうちに、それぞれ他の人たちと仕事するようになっていき、たまに飲む度に「また馬鹿なことやりたいね」と話していたんです。最初は、確か僕から違う原作を提案したんですね。その時に、監督がたまたま本屋に平積みされていた『翔んで埼玉』を見かけて、「若松、こっちやれないかな」とお持ちいただいて、僕もそこから原作を読みました。最初読んだ時は、どうやって物語を成立させようかと思案しました。原作は未完で終わっているので、結末を用意しなければいけない。それから監督と何度も飲みに行って、埼玉千葉論争など郷土ネタの話を広げていくうちに、企画として成立するんじゃないかと動き始めたのです。

ーー日本ではコメディ映画はヒットしづらい側面がありますが、企画を立てるのはスムーズに進んだのでしょうか?

若松:社内でも様々な意見はありましたし、特に埼玉に特化していて"ディス"が前面に立ってくる話なので、最初はやはり企画も難航しました。でも監督と話している時は、『電車男』をやっていた当時のノリに近かったような気がして、笑いとしての自信があったんです。日本のコメディは、数としても足りない。だからこそ独特の武内ワールドで、冒険してみたいと思いました。

「世界観を成立させられる人を考えてのキャスティング」

ーーキャスティングにも試行錯誤がありましたか?

若松:GACKTさん演じる麻実麗役を非常に悩みましたね。高校生役なので、初めは若い男性俳優を探していたんですが、この世界観にハマる役者さんがなかなか見つからなかったんです。アイデアが浮かばず候補がいなくなってきた段階で年齢制限を取っ払ってみました、その時に「GACKTさんっていうのはありますかね」と言ったら、監督が「それだよ!!」と(笑)。座組よりもこの世界観を成立させられる人を考えてのキャスティングだったんです。二階堂ふみさんも、当初はそこまでBLを意識していなかったので、女性の役設定でラブストーリーとして成立させても良いかなと考えていました。二階堂さんは非常にコメディも上手い役者さんだと思っていました。オーラがあって、何かやることが人を引き付ける素晴らしい女優さんだと思っていて、二階堂さんには早い段階からオファーしました。オファーの際は「女性役でも成立すると思っています」とお伝えしたのですが、二階堂さんから「原作も男役なら男役で勝負したい」とおっしゃっていただいて決定しました。

ーーお二方はこのヒットにどのような反応を?

若松:おかしいんじゃない? と(笑)。「くだらない映画」というのは僕は誉め言葉だと思っています。ゲラゲラ笑って日頃のストレスを発散できる、そういうのがウケるのはすごく良いことじゃないかと喜んでいました。お互いこんなにヒットするとは信じられない様子でした。

ーー最近だと、実写の日本映画、しかもコメディ映画でここまで大ヒットするのは珍しくなってきているかと思います。本作が今後の映画製作に与える影響をお聞かせください。

若松:こんなくだらない映画が、これだけ観ていただけているというのは僕自身嬉しいです。映画って考えさせられるものばかりじゃなくて、純粋に楽しめるくだらないものもあっていいと思うんです。今後こういう作品が増えてくれればうれしいです。

ーーこれだけのヒットを受けると、どうしても続編を期待してしまいますが、可能性はあるのでしょうか?

若松:今はまだ考えていません。最初作るときは続編などは考えずに作ったので、もう少し今のヒットを噛み締めて、監督と話して、もしアイデアが生まれれば、次があるかもしれません。

(取材=宮川翔/構成・写真=安田周平)

■公開情報
『翔んで埼玉』
全国公開中
出演:二階堂ふみ、GACKT、ブラザートム、麻生久美子、島崎遥香、成田凌(友情出演)、中尾彬、間宮祥太朗、加藤諒、益若つばさ、武田久美子、麿赤兒、竹中直人、伊勢谷友介、京本政樹ほか
原作:『このマンガがすごい!comics 翔んで埼玉』魔夜峰央(宝島社)
脚本:徳永友一
音楽:Face 2 fAKE       
主題歌:「埼玉県のうた」はなわ(ビクターエンタテインメント)
監督:武内英樹
(c)2019映画「翔んで埼玉」製作委員会
公式サイト:tondesaitama.com
公式Twitter:@m_tondesaitama

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