安藤サクラ、柄本佑、奥田瑛二、柄本明……日本映画・ドラマ界を牽引する華麗なる一族
対する安藤サクラの父親であり、『まんぷく』出演も話題になった奥田瑛ニ。ダンディな『ツバキ文具店~鎌倉代書屋物語~』(2017、NHK総合)の男爵役、『母、帰る~AIの遺言』(2019、NHK総合)の破天荒で繊細な父親役といった最近のドラマでますます輝きを増しているが、ここでは映画監督としての活動と、2本の映画を紹介する。
『もう頬づえはつかない』(1979)
1本目は、桃井かおり主演、東陽一監督『もう頬づえはつかない』のヒロインの相手役。いわゆる当時の当世風の若者で、ヒロインが夢中になっているのは年上のインテリ男・森本レオであって、つまりは少女漫画における「じゃないほう」のポジションなのであるが、これがまたちょっとダメだけどカッコよく終始愛があって優しい。
また、奥田は映画監督として何作も映画を作ったり、一時期は山口県下関市の映画館存続に尽力したりと、深い映画愛の人でもある。急遽代役としてヒロインを演じた安藤サクラの合唱部員姿がレアな『風の外側』(2007)や、いろいろと衝撃的な松坂慶子主演の時代劇『るにん』(2006)、松田翔太も出演する、緒形拳と少女のロードムービー『長い散歩』(2006)など、俳優たちの意外な姿を見つけるのも楽しい。
『赤い玉、』(2015)
そしてそれらの監督作品群を観た後に観るべき映画が、奥田瑛ニ主演・高橋伴明監督の映画『赤い玉、』。柄本佑が少しだけ登場したりもするのだが、とにかくエロくて、エグくて、哀しい、老いと性を描いた作品。映画監督でもある奥田自身のことを、観客としては身勝手にも重ねてしまいそうになる凄みのある演技は、時に無様でかっこ悪い姿を曝け出すのであるが、それが無性にかっこよく、色気がだだ漏れてしまう不思議。迫力の1本。
さて、若輩者ながらいくつかセレクトさせていただいたが、まだまだ私の知らないベスト柄本&奥田がたくさんあるのだろう。あなたのマイベスト作品はなんだろうか。
そして、これからが楽しみでならないのは、2人の父親同様熱心な映画マニアであり、映画監督デビューも果たした柄本佑だ。今回の主演男優賞は、『素敵なダイナマイトスキャンダル』で昭和の匂いを漂わせ継承していく存在として、『きみの鳥はうたえる』で同世代の三宅唱監督と共に「今」を描き出すこれからの日本映画の傑作の主演として評価された結果であるように思う。そして、『愛のむきだし』(2009)や『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』(2010)、『百円の恋』(2014)などで、常に映画ファンの心を鷲づかみにしてきた安藤が、母親になり『万引き家族』『まんぷく』とこれまでの彼女とは少し違う、さらなる進化を遂げた。そんな2人は、これからどんな傑作を我々に見せてくれるのだろうか。
ますます色気と面白さが増していきそうな2人の父親も、もちろん忘れてはならない、最高に魅力的な俳優である柄本時生も、安藤サクラの姉、傑作『0.5ミリ』を手がけた安藤桃子監督も。両家の足跡を追いかけることのできる時代を生きることができて、本当に幸せである。
■藤原奈緒
1992年生まれ。大分県在住の書店員。「映画芸術」などに寄稿。
■放送情報
NHK連続テレビ小説『まんぷく』
10月1日(月)~2019年3月30日(土)【全151回】
作:福田靖
出演:安藤サクラ、長谷川博己、松下奈緒、要潤、大谷亮平、桐谷健太、瀬戸康史、岸井ゆきの、松井玲奈、深川麻衣、加藤雅也、牧瀬里穂、松坂慶子、小川紗良、西村元貴ほか
語り:芦田愛菜
制作統括:真鍋斎
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/mampuku/