浅井隆が唱える“ポートフォリオ編成理論”とは? アップリンク吉祥寺の未来すぎる上映プログラム

アップリンク吉祥寺の未来すぎる上映プログラム

デジタル時代の上映プログラム

 2011年頃から映画の上映は完全にデジタル化したわけですが、映画館の上映プログラム組みは旧来と大きな変化はありません。

 大抵の作品が金曜か土曜に始まって、どこの映画館も1週間ずつスケジュールを出して、つまり1週間というのが映画の基本単位となっているわけです。

 良し悪しや実現性はひとまず置いておき、デジタルのメリットを最大限に活かすのは、ひとつはテレビのように上映プログラムを日替わりレベルに持っていくことかと思います。このことで公開中はどの映画も常に毎日やっているのではなく、火水の昼だけとか、土日のみ上映とかいう作品を作るのです。お子様向け作品は土日祝の朝昼のみ、ドロドロ昼ドラ風作品は平日の午後からだけなどですね。

 このことで劇場は「座席稼働率」をあげるのです。1週間通しのスケジュールではなく、曜日と時間帯を考えてそこにもっとも集客しやすい作品を上映することで、例えば平均30名しか入らなかった枠に、回数を絞って50名入れるのです。そうやって50名の回を増やしていくのです。

 物理的なフィルムを回していたときには日替わりはまず不可能でしたが、デジタルなら理論上は可能です(現状だと正直、結構作品データの入れ替えが厳しいのですが)。もうひとつは、Webの動画配信サービスのように新旧織り交ぜたプログラムにすることです。

 映画館が、かつてのオールターゲットから、映画を観る手段としては贅沢で、より高いクオリティで味わいたい人向けの設備に変わりつつある今、なにも新しい作品だけしか集客できないわけではない、ということです。

 AmazonプライムビデオやNetflixのトップページには、昨日今日製作されたようなピカピカの新作も、30年も前の映画も、同じように並んでいます。僕はこれがこれからの映画館のラインナップのあり方だと確信しており、ここ数年のシネマシティのラインナップは、それに近づけるようにしているつもりです。

 ところが、シネマシティが四苦八苦しながら理想の実現の半分も達成していないうちに、一足先にさらっとそれらを大体やってのけてしまっている映画館があったのです。それが、アップリンク吉祥寺です。

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