原点にあった恋愛映画としての一面も 『クリード 炎の宿敵』が捉えた『ロッキー』シリーズのテーマ

『クリード 炎の宿敵』恋愛映画としての一面

 もちろんアドニスとビアンカの他にも、実の息子との溝を埋められないロッキーや、復讐に囚われたドラゴ親子の葛藤も素晴らしい。各々のキャラクターが己の人生を戦い、それぞれの結論へ向けて進んでいく。思えばスタローンが監督・主演した『ロッキー・ザ・ファイナル』(2006年)には、こういうセリフがある。「人生ほど重いパンチはない。だが大切なのは、どんなに強く打ちのめされても、こらえて前へ進み続けることだ」これこそ1作目から一貫している『ロッキー』シリーズのテーマだろう。本作はこのテーマを見事に捉え、なおかつ原点にあった恋愛映画としての一面を強く打ち出すことで、『クリード』の物語に広がりを持たせている。これはもはやロッキーだけの物語でも、クリードだけの物語でもない。人生と戦う全ての人の物語であり、「愛」にまつわる物語だ。シリーズにまた一つ、新しい傑作が誕生した。

■加藤よしき
ライター。1986年生まれ。暴力的な映画が主な守備範囲です。
『別冊映画秘宝 90年代狂い咲きVシネマ地獄』に記事を数本書いています。

■公開情報
『クリード 炎の宿敵』
全国公開中
出演:シルヴェスター・スタローン、マイケル・B・ジョーダン
監督:スティーブン・ケイプル・Jr.
配給:ワーナー・ブラザース映画
(c)2018 METRO-GOLDWYN-MAYER PICTURES INC. AND WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.
公式サイト:www.creedmovie.jp

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