木村拓哉が平成最後に再び“ヒーロー”を演じる 「キムタク」の姿に私たちが託してきたもの

木村拓哉が平成最後に“ヒーロー”を演じた意義

 だが、それと同時になぜか見ているこちらが傷ついたような、最後の砦を崩されたような、そんな悲しみを覚えたのを記憶している。屈しないヒーローであり続けた木村拓哉だからこそ、最上の転落が意味することの大きさ、沖野が抱く絶望と葛藤、そして正義の限界の絶望が描かれたのだろう。

 私たちは、平成の30年間でいくつもの悲しみを見てきた。大きな災害から、良心を疑う事件も次々と起きた。それは、最上の罪を目の前にした沖野のように、この先何を信じたら良いのかという絶望に近いものだった。だが、もうすぐ新しい時代が来る。

 絶望の先を生きる。『マスカレード・ホテル』で見せてくれた木村拓哉演じる新たなヒーローは、ひとりでは戦わない。長澤まさみ演じるホテルマンの山岸尚美とバディを組み、小日向文世扮する元相棒の能勢刑事に助けを仰ぐ。孤軍奮闘から、味方を信じて手を取り合うヒーローへ。もちろん、そこには小さな裏切りがあるかもしれない。だがそれでも、もう一度信じてみようという気持ちが、次の一手となる。新たな時代の幕開け前に、また私たちは“木村拓哉のようにありたい”と、襟を正すのだ。

(文=佐藤結衣)

■公開情報
『マスカレード・ホテル』
2019年1月18日(金)全国東宝系にて公開
出演:木村拓哉、長澤まさみ、小日向文世、菜々緒、生瀬勝久、松たか子、石橋凌、渡部篤郎ほか
原作:『マスカレード・ホテル』(集英社文庫刊)   
脚本:岡田道尚
音楽:佐藤直紀
監督:鈴木雅之
配給:東宝
製作プロダクション:シネバザール
(c)2019 映画「マスカレード・ホテル」製作委員会 (c)東野圭吾/集英社
公式サイト:http://masquerade-hotel.jp/

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