『ブラックパンサー』や『クリード 炎の宿敵』が大ヒット ブラックムービーに今何が起きている?

ブラックムービーに今何が起きているのか?

『クリード 炎の宿敵』(c)2018 METRO-GOLDWYN-MAYER PICTURES INC. AND WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

 例えば『ブラックパンサー』のライアン・クーグラー監督のデビュー作『フルートベール駅で』(2013年)もサンダンス映画祭で大賞と観客賞のW受賞を果たし、その後に多くの賞を受賞した。アカデミー賞まではたどり着けなかったが、ライアン・クーグラー監督の名前は一躍広まり、信頼を勝ち得た。その結果、続く『クリード チャンプを継ぐ男』(2015年)が製作され、ロッキー役のシルヴェスター・スタローンが『ロッキー』(1976年)から39年ぶりにアカデミー賞にノミネートされる快挙を成し遂げ、全米興行成績にて1億ドル突破を達成したのだった。そして『フルートベール駅で』や『クリード チャンプを継ぐ男』の賞レースと興行成績での成功が、『ブラックパンサー』という作品にライアン・クーグラー監督を結び付け、そして日本ではこれから公開予定の『クリード 炎の宿敵』(2018年)という作品が生まれた。続編となる『クリード 炎の宿敵』は、監督がスティーヴン・ケープル・Jr.という新進監督に変わったが、アメリカの興行成績では早々と1億ドルを達成させている。

『ビール・ストリートの恋人たち』(c)2018 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All Rights Reserved.
『ブラック・クランズマン』(c)2018 FOCUS FEATURES LLC, ALL RIGHTS RESERVED.
『妻たちの落とし前』(c)2018Twentueth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved.
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『ビール・ストリートの恋人たち』(c)2018 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All Rights Reserved.
『ブラック・クランズマン』(c)2018 FOCUS FEATURES LLC, ALL RIGHTS RESERVED.
『妻たちの落とし前』(c)2018Twentueth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved.
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 そして、一番成功した例が『ムーンライト』(2016年)だろう。トロント国際映画祭にて上映された時の評判が瞬く間に広まっていった。アメリカでは限定公開からワイド公開に切り替わり、そしてアカデミー賞にノミネートされ、見事アフリカ系アメリカ人監督として初の作品賞を受賞した。そのバリー・ジェンキンス監督が次の作品に選んだのが、アメリカの文豪ジェームズ・ボールドウィンの『ビール・ストリートに口あらば』が原作の『ビール・ストリートの恋人たち』。こちらも既に発表されているゴールデングローブ賞ではドラマ部門作品賞で『ブラックパンサー』とともにノミネートされている。そしてもう1作品忘れてはならないのが、『ブラック・クランズマン』だ。こちらは必要とならば相手を殺すこともある過激白人至上主義軍団クー・クラックス・クラン(KKK)に、黒人刑事が侵入捜査してしまったという信じられない事実を映画化した作品で、『ドゥ・ザ・ライト・シング』(1989年)や『マルコムX』(1992年)などで一世を風靡したスパイク・リーが、久々に映画界に話題を振りまいている作品である。こちらもゴールデングローブ賞のドラマ部門作品賞にノミネートされ、ノミネートされた5作品のうち3作品が黒人監督による作品という、今までには絶対になかった状況となっている。さらには、『それでも夜は明ける』(2013年)でアカデミー賞作品賞を獲得したスティーヴ・マックイーン監督の最新作『妻たちの落とし前』(2018年)も多くの賞でノミネートされており、早々と4月からの日本公開が決まっている。

『アンクル・ドリュー』Motion Picture Artwork (c)2018 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.

 このように賞レースで結果を出した監督ばかりでなく、『アンクル・ドリュー』(2018年)のようなコメディ作品も日本上陸を成功させた。『ドラムライン』(2002年)のチャールズ・ストーン3世監督作で、NBAのスーパースターであるカイリー・アービングが主演。アービングが出演した人気CMシリーズのキャラクターを映画化し、往年のNBAスターも出演させた。このようなコメディ作品が日本で劇場公開される機会はあまりなかったことで、以前はあってビデオスルーであった。そして、黒人監督ではないが(ジャスティン・ティッピングというライアン・クーグラー監督の同郷の知人)『キックス』(2016年)という『ムーンライト』で助演男優賞に輝いたマハーシャラ・アリが出演のインディペンデント映画が、アメリカ公開から2年の時を要したが、今年に入って日本で公開された。

 ただ注意したいのが、賞レースや興行成績の成功はアメリカ本土のことで、日本では未だ少しギャップが生じている。アメリカでは歴史的記録となった『ブラックパンサー』ですら日本では初登場2位で、1位を獲得していない。そしてエヴァ・デュヴァネイ監督の『A Wrinkle in Time』(2018年/日本未公開)などはアメリカで興行成績1億ドルを突破しているが、未だ日本での公開は未定だ。しかしながら、アメリカのハリウッドにかつてあった黒人の作り手に対して抱いていた風説を近年少しずつ崩しているように、日本でのブラックムービーのヒットも時間の問題だと感じている。何しろ、2019年は年明けからブラックムービーの日本公開がめじろ押しで希望が見えるのだから。

■杏レラト
黒人映画歴史家。主に『映画秘宝』にて執筆中。著者『ブラックムービー ガイド』(スモール出版)。NBAファン歴25年以上。わりと日本のTVドラマが好き。ホームページ。

■リリース情報
『ブラックパンサー』
MovieNEX発売中
MovieNEX:4,000円+税
4K UHD MovieNEX:7,800円+税
4K UHD MovieNEXプレミアムBOX(数量限定):14,000円+税
発売元:ウォルト・ディズニー・ジャパン
(c)2018 MARVEL

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