映画における残酷描写の規制に変化? 一昔前ならR18+だった表現がR15+止まりになる傾向に
R18+を受けてしまうと、劇場集客数が減ってしまうため、過剰とされた暴力シーンを削除したり、過激とされた性描写をボカシたりしてR15+あるいはPG指定まで下げて、劇場公開を行うパターンがホラー映画ではよくみられる。前述の『ホーンズ』もそうだし、リメイク版『マニアック』における頭皮剥がしのボカシ処理、同じくリメイク版『キャリー』の殺傷描写の暗転処理、『チャッピー』の胴体切断シーンの削除など、例を挙げるとキリがないくらい頻繁に行われているのだ。
なぜ、映倫がこのよう指導を行うのかについては後で述べるとして、最近の残酷描写とレイティング傾向をおさらいしてみよう。
R15+の『ザ・プレデター』では、木に吊るされた惨殺体から滴る血と内臓によって、光学迷彩で目視できなかったプレデターの姿が露わになるという最高にグロカッコいいシーンを始め、人体欠損描写が連発する。一昔前なら人体が欠損する瞬間が見られる場合、問答無用でR18+とされていた。ちなみに“人体欠損”でなければ良く、ゾンビなど“元”人間含む怪物の欠損描写はR15+指定で許容され、さらに人間であっても欠損の瞬間が映されなければ、首が飛ぼうが、腕がもげようがR15+ないしPG指定となるのが慣例的であった。
閑話休題。『死霊館』よりよっぽど暴力的で残虐な『死霊館のシスター』は、誰でも観られるG指定である(ちなみに『死霊館』は「怖いから」という理由でPG12というふざけた判定がされている)。近日公開の『へレディタリー/継承』には、非常に“残酷な処理が行われた”死体が登場する上、裸体が露わになるシーンもあるが、PG12指定かつ未編集のまま公開される予定だ。『クワイエット・プレイス』や『リターン・オブ・ジーパーズ・クリーパーズ JEEPERS CREEPERS 3』にも相当エゲツない死体が登場するが、やはりG指定だ。R15+指定を受けている『アンダー・ザ・シルバーレイク』には頭部破壊場面があるが、映倫が指摘したのは性愛シーンのみ。また少し古い作品になるが、ズタズタに切り裂かれた死体が登場したり、頭を斧でカチ割ったりする場面がある『哭声/コクソン』もG指定(ただし、死体が登場する場面の明度を落として、ほとんど死体が見えないよう編集が行われている)。
はてさて、これはどういうことなのだろう? もしかして映倫は、『過度・過剰』の判断基準を下げてきているのだろうか? もう少し掘り下げてみよう。
今年に入って、過度な暴力描写があるとしてR18+指定を受けた映画は、成人向け作品を除くと『レザーフェイス-悪魔のいけにえ』くらいである(無修正版『シェイプ・オブ・ウォーター』もR18+だが、人間のセックスシーンからモザイクを取っただけである)。
また映倫からR18+指定を受けたため、大幅に修正を行った後、R15+となった作品は『V.I.P. 修羅の獣たち』のみだ。どちらも、先に挙げた作品群以上に残酷な描写はない。それなのにR18+指定を受けているのだ。しかし、この2作の共通点に着目すると、興味深いことが浮かび上がる。