平沼紀久監督が語る、『DTC-湯けむり純情編- from HiGH&LOW』制作秘話 「DTCだからこそ“外に出す”ことができた」
『HiGH&LOW』シリーズのスピンオフムービー『DTC -湯けむり純情篇- from HiGH&LOW』が、現在公開されている。男たちの闘いと友情を描く『HiGH&LOW』シリーズは、LDHの俳優やパフォーマー、若手俳優たちが一堂に会する、累計興収60億円・観客動員450万人を突破する人気シリーズ。そのスピンオフとなる本作では、ダン(山下健二郎)、テッツ(佐藤寛太)、チハル(佐藤大樹)の3人組“DTC”の活躍が描かれる。今回、リアルサウンド映画部では、平沼紀久監督にインタビューを行った。これまでシリーズの脚本を手がけてきた平沼氏が初めて監督を務めた経緯や、同作に散りばめられた小ネタについてなど、撮影秘話を掘り下げた。(編集部)
キャラクター的に「DTCだと許される」
ーー平沼さんは昨年Huluで配信されていたショートムービー『DTC』に続いて、今回映画『DTC-湯けむり純情編- from HiGH&LOW』の脚本だけではなく監督も務めています。まずは、ご自身でメガホンをとった経緯を聞かせてください。平沼:今回、DTCが映画になるということで、DTCの3人からも「ノリさんとやりたい」と言われ、HIROさんからも「DTCを映画化するならノリでしょ」と言っていただきました。僕自身も、DTCを映画にするなら自分で撮りたいと考えていました。
ーー満場一致ですね。
平沼:満場一致です(笑)。
ーー本作は、笑って泣けるロードムービーといった仕上がりになっています。スピンオフを作るにあたって様々なアイデアが出ていたとのことですが、最終的にロードムービーに着地した決め手は?
平沼:HIROさんですね。最初、DTCがSWORD内にいる設定の話を書いたんですが、そこでHIROさんから「SWORDの外に出る方がいいんじゃないの?」とアドバイスをもらって、それがすごく腑に落ちたんです。SWORDの世界はモラトリアムで、そこから出るということは、「卒業」ではなく、「世界を広げる」ということなんじゃないかと。それが結果としてキャラクターたちの成長に繋がっていく。これまでは「HiGH&LOWの世界観」に色々な要素を入れていたけれど、広げることで見つかるものもあるんじゃないかと。新しいものとコラボレーションしやすくもなりますし。SWORDの面々の中で、1番DTCが外に出しやすかったんですよね。
ーー例えば、SWORDのトップたちや、琥珀さんや九十九さんが「外に出る」となると、今回のように「青春したい」的な理由ではなく、もっと大きな意味付けが必要になってきそうですね。
平沼:そうなんです、『HiGH&LOW』を背負っていった人間が外に出るとなると、大きな意味を持ったストーリーを構築しないといけない。でも、キャラクター的に「DTCだと許される」というか。ダンを筆頭に、DTCの持っているコミカルさ、愛されキャラを本編でもうまく作っていたからというのもあるんですけど、この3人だからこそ、違和感なく「外に出る」ことができたんじゃないかな。そこまでHIROさんは見通していたのかもしれない。
ーーその後、舞台が温泉宿になったのは何故なのでしょうか。
平沼:当初は、野宿を延々とやっていくとか、キャンピングカーで旅をするいう案も考えたんです。色々なバージョンを考えた時に、結局「3人はバイクでしょ」となりました。そこから「立ち寄る場所は温泉宿がいいよね」「温泉だったら脱げるよね」と連想していって、舞台が決まりました。
ーー「脱げるよね」というのは、「LDHならではの肉体美が披露できる」という意味でしょうか。
平沼:やっぱりファンの皆さんは肉体美見たいのかな、と。それに、ダン役の(山下)健二郎は、普段からあんまり脱がないイメージでしたし、レアな一面をお見せしたいなとか、色々考えました。
ーーしかしながら、本作では温泉宿での入浴シーンはありませんね(笑)。
平沼:そうなんです(笑)。しっかりとした温泉街を貸し切って撮ることができず、結果温泉に一切入らなかったんです。その分サウナのシーンを入れたっていう(笑)。
ーーあのサウナシーンにはそんな意味があったのですか。そして、DTCが未亡人の女将さんのいる温泉宿に住み込みで働くことになり、一人で宿を切り盛りする女将さんのマリ、娘のメグミ、そしてそれをサポートする従業員・宮崎の仲を取り持つというストーリーが肉付けされていったと。
平沼:最初は僕の体験談をもとにした脚本だったんですよ。作家チームの中でもめちゃくちゃ盛り上がったんですけど。
ーーそれはどんな体験だったのですか?
平沼:もうすぐ引っ越しをするという俳優仲間の後輩の誕生日に彼と彼の恋人に温泉旅行をプレゼントして、その間に部屋の引っ越しを全部終わらせるというサプライズを行ったんです。
ーーすごく手の混んだサプライズですね。
平沼:そうなんですよ、鍵も理由つけて預かって、皆で買い物してその経緯もカメラで撮影して……。そんな風にダンのお祝いのために、コブラやヤマト、ノボルが奔走するという脚本を書いていたんです。その過程で「ダンを酔っ払わせるために、ショーに連れて行く」というエピソードが出てきて、そこからミュージカルというアイデアが生まれたのかな。その後、温泉宿が舞台の人情物になるということが決まり、同じく脚本を担当している渡辺啓が「プロポーズするのはどう?」とか言い始めて、「じゃあ泣かせは啓ちゃん担当ね」と、僕が書いてる部分も含めて、ピースを1回全部バラバラにして、また組み立てていったので、今回は非常に時間がかかりましたね。