綾瀬はるかと竹野内豊が築いた2人なりの夫婦像 『義母と娘のブルース』は“当たり前の奇跡”を描く

『義母と娘のブルース』が描く当たり前の奇跡

 一つひとつ全力でぶつかっていく姿を微笑ましく思い「手つなぎませんか? 嫌ならいいんですよ」と亜希子に歩み寄って、提案というスタイルで距離を縮める良一。想像していた以上に、みゆきとの絆を深め、不器用ながらもまっすぐ子育てに奮闘する亜希子に、愛情を芽生えていることに気づく。そして、この義母と娘をずっと見守っていきたいという、生きる欲が生まれてくる。

 また、亜希子も、さして話すほどのことでもないと思っていることを「これからいっぱい話してください」と言ってくれた良一に心が温かくなるのを感じていた。呼び捨てにされるだけで、名前の感覚が変わるのだという初めての経験。手をつないで歩くこと、不意に抱きしめられること。孤独から解き放つぬくもりを教えてくれた良一と少しでも長く一緒にいられる方法はないか……と、奇跡を願ってしまう。

 お互いを大事に思うようになるほど、手に入れたものが大きいほど、失うのが怖くなる。だが、それは余命宣告されている良一が特別なわけではない。当然、私たちの命にも限りがある。その時期が明確になっているかどうかなだけで、本質的には亜希子と良一の置かれている状況と何も変わらないのではないか。くだらない話をできる相手と出会えたこと。その人に今日も「着いたらお話しします」と言えること。そして例えば、こうして「昨日こんなドラマがあって、こう思った」と話せることもそうだ。気付かぬうちに、当たり前だと見過ごしていた奇跡が人生を作っているのだ。そんな愛しい日々がこの先も続くように。「奇跡はわりとよく起こる」その言葉を信じて、少しずつ家族になってきた3人の行末を見守りたい。

(文=佐藤結衣)

■放送情報
火曜ドラマ『義母と娘のブルース』
TBS系にて、毎週火曜22:00〜23:07放送
出演:綾瀬はるか、竹野内豊、佐藤健、横溝菜帆、川村陽介、橋本真実、真凛、奥山佳恵、浅利陽介、浅野和之、麻生祐未
原作:『義母と娘のブルース』(ぶんか社刊)桜沢鈴
脚本:森下佳子
プロデュース:飯田和孝、大形美佑葵
演出:平川雄一朗、中前勇児
製作著作:TBS
(c)TBS
公式サイト:http://www.tbs.co.jp/gibomusu_blues/

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