吉岡里帆が生活保護のリアルに迫る 『健康で文化的な最低限度の生活』“青春ドラマ”の側面も?
さて、新人ケースワーカーのえみるが、初めて深く関わることになる生活保護受給者は阿久沢正男(遠藤憲一)である。彼は生活保護費のほとんどを借金返済に回し、食事も満足に取れない生活を送り、体調も芳しくない。そのため就職活動をしようにも当然上手くはいかないのである。借金返済だけが「自分の生きている証」なのだと口にする彼は、えみるの積極的な態度に対して腰が引けている。しかしなぜえみるはそんなに積極的なのか。自殺をほのめかすことが癖になっていて、周囲の人々にまともに取り合ってもらえなかった受給者のひとりが、ある日本当に自殺してしまったのだ。新人ケースワーカーの彼女にとって、かなり苦しい経験となったのだろう(新人じゃなくてもそうであろう)。
そして不器用な彼女は、愚直なまでに、自分の担当する受給者たちに寄り添っていくことになる。この回の阿久沢は、えみるの必死な説得により法テラスに行くことを決心。結果、借金の過払いが発覚したのである。不器用で、愚直で、積極的な彼女の行動の賜物である。阿久沢の社会復帰の第一歩を支えることになったわけだが、演じる遠藤の“コワモテ”な顔立ちが柔らかく崩れたことこそが、えみるの得た最も大きなものかもしれない。
日本国憲法の第25条の一部をタイトルに冠した、『健康で文化的な最低限度の生活』。不器用な新人ケースワーカーの目を通すことによって、深刻な、センシティブな問題を、きわめて前向きに捉えていくことができるような気がする。この物語を主演の吉岡を筆頭に、彼女らがどのようなアプローチで見せていくのか、目が離せない。
■折田侑駿
映画ライター。1990年生まれ。オムニバス長編映画『スクラップスクラッパー』などに役者として出演。最も好きな監督は、増村保造。
■放送情報
『健康で文化的な最低限度の生活』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週火曜21:00〜放送
出演:吉岡里帆、井浦新、川栄李奈、山田裕貴、小園凌央、水上京香、安座間美優、谷まりあ、鈴木アメリ、内場勝則、徳永えり、田中圭、遠藤憲一ほか
原作:柏木ハルコ『健康で文化的な最低限度の生活』(小学館『週刊ビッグコミックスピリッツ』連載中)
脚本:矢島弘一、岸本鮎佳
監督:本橋圭太、小野浩司
プロデュース:米田孝(カンテレ)、遠田孝一(MMJ)、木曽貴美子(MMJ)、本郷達也(MMJ)
制作協力:メディアミックス・ジャパン
制作著作:カンテレ
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