『この世界の片隅に』『グッド・ドクター』『ハゲタカ』 夏ドラマは傑作が勢揃い?

夏ドラマは傑作が勢揃い

 新しいドラマが続々と始まっている。今回は、既に放送されたドラマ、これから放送のドラマの注目作品を5本ピックアップする。

『この世界の片隅に』(TBS系)

 まず、夏ドラマの大本命『この世界の片隅に』である。もちろん、傑作アニメ映画『この世界の片隅に』(2016)と比較される運命にはあるだろうが、脚本が『ひよっこ』(NHK総合)の岡田惠和、音楽が久石譲、演出が『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)、『カルテット』(TBS系)の土井裕泰、プロデュースが『カルテット』の佐野亜裕美という完璧な布陣には期待しかない。

 初回放送ではそれぞれの配役がピタリとはまり、収まるべきところに収まったかのような安心感だったが、特に北條家の隣家の娘・幸子役の伊藤沙莉は強烈だった。すずと登場人物たちは、祖母の家でのスイカと着物、哲(村上虹郎)との鉛筆と絵、家族との似顔絵と柘の櫛、そして周作とのキャラメル、傘と干し柿といった様々なものを、時に時間を隔てながらも、相互に与え合う行為を繰り返している。この優しい贈与の繰り返しが、ドラマの鍵になっていくのかもしれない。

『グッド・ドクター』(フジテレビ系)

 こちらは第1話を見て涙が止まらなかったドラマ。韓国ドラマ『グッド・ドクター』(KBS)が元であり、『刑事ゆがみ』(フジテレビ系)、『海月姫』(フジテレビ系)の徳永友一が脚本を担当している。

 『トドメの接吻』(日本テレビ系)とは正反対の純粋無垢な演技が素晴らしい山崎賢人がサヴァン症候群の小児外科医を演じる。第1話だけでも上野樹里や柄本明、浜野謙太の温かい優しさと、上司である藤木直人の正しさ、出世第一の戸次重幸の憎めない格好悪さなど、全ての登場人物が活きていた。自閉症スペクトラム障害という対人間のコミュニケーション能力に大きな障害を抱えた主人公がどう患者たちと向き合っていくか、周囲がどう共存していくかということが大きな主題となるだろうが、彼が小児科医として働く上でぶつかっていく「伝えたいけれど伝わらない」もどかしさとその昇華に共感して涙したのは、私だけではないはずだ。医療ものという高視聴率必須ジャンルで、昨今のテーマである多様性を受け入れることを描くと共に、多くの人が悩んでいるコミュニケーションや信頼の問題について考えさせるドラマである。圧倒的に純粋な優しさが、頑なな心を溶かし、人の命も救う。優しいドラマが愛される昨今、これほど強いドラマはないだろう。

『ハゲタカ』(テレビ朝日系)

 こちらはどうしても11年前のNHKドラマ版(2007)のことを考えずにはいられない。当時テレビでの知名度はそう高くはなかった大森南朋が主演、柴田恭平や松田龍平が好演し、当時NHKにいた大友啓史(『るろうに剣心』,2012)が演出を務めた傑作ドラマである。村上ファンド事件、ホリエモンのライブドア事件などが世間を賑わしていた2006年の翌年に放送されたこのドラマは、2004年に刊行された真山仁の経済小説『ハゲタカ』が原作であるが、当時の状況を多く反映していた。そして11年後、平成最後の2018年、経済事情も大きく変わった現代、再度リメイクされる新生『ハゲタカ』は新しく何を描き出すのだろうか。演出は『相棒』の和泉聖治、主演綾野剛に、小林薫、渡部篤郎はじめ安心のキャストが周りを固める。確実にいいドラマになると期待している。

 そして、忘れてはならないのが深夜ドラマである。

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