ユースケ・サンタマリアの不器用さが切ない 『あなたには帰る家がある』いよいよ最終回へ
それまでは、おそらくなんでも1人で解決しようとしてきたのではないか。気になることは手帳にメモし、足を使って調べ、それでも納得のいく答えが出ずに、胸の内に抱え込んでいく。自分が受け入れることでうまくいくなら、全てを飲み込もう。だって俺は、秀明みたいな男とは違って、誰かが受け入れてくれることなんてないのだから……という交際経験のなさからくる自己肯定感の低さ。そして、狭くて古い小さな家で両親が見せる古風な夫婦像。さらに“女性に縁がなさそうだから”と自分を選んだ綾子から、“そう言えば満足でしょ?”という態度で「あなたのおかげです」と言い続けたことで、太郎の考えはより一層凝り固まっていった可能性すらある。誰かと向き合わずにいることが、頑固で偏屈で扱いにくい中年像を作り出す。
真弓の少々ストレートすぎる言葉ぐらいが、太郎を開放するにはちょうどよかったのかもしれない。学生時代に陸上部であったこと、体が小さくて「ナス坊」と呼ばれていたこと、ダサい掛け声が忘れられないこと、テント設置が得意なこと……他愛もない会話がどれほど私たちの心の風通しをよくしてくれるか、2人のやりとりで気付かされる。がさつな真弓と仏頂面な太郎が好きな映画に『タイタニック』を挙げるのも、隠れたふたりのロマンチストな一面が見えて微笑ましい。
不器用ながらも愛情深い太郎のおでこにそっとキスをして、綾子と秀明に向かって「この人は、あんたにはもったいない。私が幸せにします」と宣言した真弓。それは、分かり合えない“嫌いな女”への復讐か、それとも求めていた“本質的な愛”への目覚めか。次週、いよいよ最終回。彼らが帰る“家”はどこか。予告編を見るとエレベーターに閉じ込められているようで、そもそも“家”に帰れるのか? と、ラストまで4人には振り回されそうだ。
(文=佐藤結衣)
■放送情報
金曜ドラマ『あなたには帰る家がある』
TBS系列にて、毎週金曜22:00〜22:54放送
出演:中谷美紀、玉木宏、ユースケ・サンタマリア、木村多江、駿河太郎、笛木優子、高橋メアリージュン、藤本敏史(FUJIWARA)、トリンドル玲奈
原作:山本文緒『あなたには帰る家がある』(角川文庫刊)
演出:平野俊一
脚本:大島里美
プロデューサー:高成麻畝子、大高さえ子
製作:ドリマックス・テレビジョン、TBS
(c)TBS
公式サイト:http://www.tbs.co.jp/anaie/