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芸能事務所が映画配給を行うメリットとは? LDH picturesの可能性を探る

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 現在、邦画の多くが製作委員会方式でつくられている。興業リスクを分散するためにつくられたシステムだが、同時に映画の内容に意見を出す権限を持つ関係者が増え、本来つくろうとしていた作品から離れていってしまう不安定さも含まれている。また、映画業界の常として、途中まで進んでいた企画、あるいはある程度撮影も進んでいた作品が、配給・製作側の事情でお蔵入りするのも珍しいケースではない。芸能事務所にとっては、抱えている俳優やアーティストを稼働させた分だけ機会損失につながってしまう。

 芸能事務所が自社で配給までを手がければ、そうしたリスクは減り、製作委員会に参加するよりも自由度が高い作品をつくることができる。スターダスト所属俳優が多く出演する「スターダストピクチャーズ」作品やジェイ・ストーム作品、そしてLDH Pictures作品にも顕著なように、自社のリソースを最大限に活かした映画製作が行えるのだ。

 ビジネスとしても、製作出資での参加よりも配給のほうがうまみは大きい。映画ビジネスの慣例として、興行収入の約半分程度が配給収入となり、残りから宣伝費等をのぞいたものが製作会社には分配される。むろんリターンが大きくなるぶんリスクも上がるが、配給としてかかわるほうが、いち製作会社にとどまるよりも一定の収益が期待できる。

 ただし、もちろんメリットばかりではない。映画会社に比べれば、当然コンスタントな本数の配給は難しく、規模は大きいものにはなりにくい。実際、「スターダストピクチャーズ」も、今年の配給作品は『南瓜とマヨネーズ』の1作品のみとなっている。

 しかし、俳優やアーティストという資産を抱え、それを活かした制作を行えるコンテンツホルダーとなることは、芸能事務所にとって大きな強みとなる。テレビの凋落が散々叫ばれ、NetflixやAmazonといった新たな映像媒体が勢力を拡大している真っ只中で、テレビの決まった枠の中に所属俳優たちを提供し続けるだけでは、先細りする一方だ。自社で映像作品の制作・配給を行えれば、映画館のみならずNetflixやAmazonとも渡り合っていけるようになる。あるいは、そうしたサービスを通じて世界各国に配信を行い、事業を拡大することも不可能ではないだろう。

 LDHによる映画への取り組みは、こうした流れのなかにあるものと捉えられる。そして同社には音楽やパフォーマンスを中心としたアーティストが多く所属している点が、この分野においても強みになるだろう。劇映画のみならず、ライブビューイングのようなODS作品(other digital source/非映画デジタルコンテンツ)や、人気アーティストたちの密着ドキュメンタリーを配給できるからだ。また、『HiGH&LOW』シリーズを実現できたように、同社は「会社で一丸となって取り組む」プロジェクトを得意としている。人気の自社アーティストが大挙出演する”お祭り映画”をつくれることは、芸能プロによる映画製作・配給でもっとも期待されるところだ。LDHが今年から本格的に取り組んでいる海外展開においても、映像作品は大きな役割を果たすだろう。芸能事務所の役割が問われる今、LDHの挑戦は今後の日本のエンタメ業界のあり方に一石を投じる可能性をはらんでいる。

■斎藤岬(さいとう・みさき)
1986年生まれ。編集者、ライター。月刊誌「サイゾー」編集部を経て、フリーランスに。編集を担当した書籍に『大人アイドル プロフェッショナルとしてのV6論』、「別冊サイゾー 『想像以上のマネーとパワーと愛と夢で幸福になる、拳突き上げて声高らかに叫べHiGH&LOWへの愛と情熱、そしてHIROさんの本気(マジ)を本気で考察する本』」(共にサイゾー刊)など。

■公開情報
『Mr.Long/ミスター・ロン』
12月16日(土)新宿武蔵野館ほか全国順次公開
出演者:チャン・チェン、青柳翔、イレブン・ヤオ、バイ・ルンイン
監督・脚本:SABU
製作:LiVEMAX FILM、LDH pictures、BLK2 Pictures、高雄市文化基金會、Rapid Eye Movies
配給:HIGH BROW CINEMA
映倫:PG-12
(c)2017 LiVEMAX FILM / HIGH BROW CINEMA
公式サイト:https://mr-long.jp/

      

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