「週末映画館でこれ観よう!」今週の編集部オススメ映画は『ギミー・デンジャー』『トリガール!』

 編集部の週末オススメ映画(9月1日~)

 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、編集スタッフ2人がそれぞれのイチオシ作品をプッシュします。

『ギミー・デンジャー』

 2017年劇場鑑賞本数404本(2017年9月1日現在)、週末は基本的に映画館で暮らしている、リアルサウンド映画部のロン毛担当・宮川がオススメするのは、『ギミー・デンジャー』。

 「手を叩いたらスタートだ」。向かいに座るイギー・ポップを前に、サングラスをかけたジム・ジャームッシュが「これからイギーことジム・オスターバーグに最高のロックバンド“ストゥージズ”の話を聞く」と宣言する。2人は同じフレームの中で顔を揃えることはないが、冒頭のこのシーンだけで『ギミー・デンジャー』が最高のドキュメンタリー映画であることを確信した。

 『デッドマン』と『コーヒー&シガレッツ』ではイギー・ポップを役者として自らの作品に登場させてきたジャームッシュが、「この映画はストゥージズへのラヴレター」と語るとおり、本作の主人公はイギー・ポップではなく、あくまでストゥージズだ。イギー・ポップはもちろん、8年に及ぶ制作期間の途中で惜しくもこの世を去ってしまったオリジナル・メンバー、ロン・アシュトンとスコット・アシュトン、そしてスティーヴ・マッケイの3人の貴重なインタビューが収録されているのは、ファンにとっては感慨深いものだろう。

 映画の構成は、メンバーや関係者のインタビューと当時のライブ映像を中心とした非常にシンプルな作りで、ジャームッシュが監督ということを思わず忘れてしまいそうになるほど。そこから感じ取れるのは、ジャームッシュの並々ならぬストゥージズに対する愛だ。

 監督がジャームッシュだからこそ語られる、イギー・ポップによる当時のエピソードは聞いていてまったく飽きることはないし、ラストで映し出される2010年のロックの殿堂でのイギー・ポップのスピーチは、全人類必見レベルの名スピーチだ。ストゥージズやイギー・ポップ、ジャームッシュのことを知らない人も観るべき名ドキュメンタリーではないだろうか。

 何気ない日常を暖かな視線で切り取った、現在公開中のもう一つのジャームッシュ監督作『パターソン』(こちらでもイギー・ポップが意外な形で登場する)もあわせてオススメしたい。

 なお、リアルサウンド映画部では、ドレスコーズ志磨遼平による『ギミー・デンジャー』の特集インタビューを掲載中!

■公開情報
『ギミー・デンジャー』
9月2日(土)新宿シネマカリテほか全国順次公開
監督:ジム・ジャームッシュ
出演:イギー・ポップ、ロン・アシュトン、スコット・アシュトン、ジェームズ・ウィリアムスンほか
提供:キングレコード、ロングライド
配給:ロングライド
2016年/アメリカ/英語/108分/アメリカンビスタ/カラー、モノクロ/5.1ch/PG12
(c)2016 Low Mind Films Inc
公式サイト:http://movie-gimmedanger.com

『トリガール!』

 酉年生まれのトリ顔です。そんなリアルサウンド映画部のゆとり女子・戸塚がオススメする作品は、『トリガール!』。

 本作は、作家の中村航が、母校芝浦工業大学の人力飛行サークル“Team Birdman Trial”をモデルに執筆した同名小説を、『ヒロイン失格』の英勉監督が実写化した青春エンターテインメント。ひょんなことから人力飛行サークル“TBT”に入部した主人公・鳥山ゆきなが、唯一の二人乗り人力飛行機で“鳥人間コンテスト”を目指す模様を描く。一浪して理系大学に入学した毒舌女子大生・鳥山ゆきな役を土屋太鳳、“狂犬”と呼ばれるパイロット班の先輩・坂場先輩役を間宮祥太朗、人力飛行サークルTBTの部長かつパイロット班の先輩・高橋圭先輩役を高杉真宙がそれぞれ演じるほか、キャストには池田エライザ、ナダル、矢本悠馬らが名を連ねる。

 トリになりたいと思ったことはありませんか? 私はあります。飛行機でもなく、ヘリコプターでもない。自分の脚力で空を飛ぶなんて……どんな景色が目の前に広がるのか想像もできません。そんな夢みたいなことを叶えているこの映画。でも決して夢物語ではないのです。

 人力で空を飛ぶからこそ、地獄のような厳しいトレーニングと減量の日々を送らなければならない。そんなバリバリなスポ根ものを体育大学に通っている土屋さんが演じているのだから、説得力があります。自転車に乗っている姿が輝いています。また、鬼気迫る表情でトレーニングに励んでいる土屋さんと間宮(祥太朗)さんの姿は、なんとも迫力ある映像に仕上がっているのです。ですが、二人とも汗すらも爽やか。さらに犬猿の仲である二人が、いがみ合うシーンはなんとも秀逸です。

 スポ根ものでもあり、コメディでもあり、そしてラブもある。初めから最後まで全速力で駆け抜けていくような疾走感。そして、“笑い”がこれでもかと詰め込まれています。思わず吹き出してしまうシーンもあるので、鑑賞中は飲み物を口に含み過ぎないことをオススメします。

 坂場先輩(間宮祥太朗)が目指す「琵琶湖のテッペン」とは一体どこなのか。果たして、ゆきなと坂場先輩は「琵琶湖のテッペン」にたどり着くことができるのか……。

 本作の主題歌である、ねごとがカバーしたスピッツの楽曲「空も飛べるはず」も要チェックです!

■公開情報
『トリガール!』
全国公開中
出演:土屋太鳳、間宮祥太朗、高杉真宙、池田エライザ、矢本悠馬、前原滉、佐生雪、ナダル(コロコロチキチキペッパーズ)、羽鳥慎一、轟二郎、ひこにゃん
原作:中村航「トリガール!」(角川文庫)
監督:英勉
脚本:髙橋泉
音楽:遠藤浩二
主題歌:ねごと「空も飛べるはず」(キューンミュージック)
製作:映画「トリガール!」製作委員会
制作プロダクション:ダブ
配給:ショウゲート
(c)2017映画「トリガール!」製作委員会
公式サイト:torigirl-movie.com

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「映画シーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる