ライアン・ゴズリングはジェームズ・ディーンの再来? 『ラ・ラ・ランド』に見た神話的スターの面影

 二人が初めてのデートで見る映画はジェームズ・ディーン主演の『理由なき反抗』(1955、ニコラス・レイ)だ。この映画の公開1か月前、自動車事故によってわずか24歳で亡くなった神話的大スター、ジェームズ・ディーンの面影を、ほかならぬゴズリングが宿していることにデイミアン・チャゼル監督は気づいていたのだろうか。ゴズリングの初期出演作『完全犯罪クラブ』(2002、バーベット・シュローダー)では、理由なく殺人に手を染める裕福な高校生役でディーンを彷彿とさせる赤いジャケットを着ていた。同年の日本未公開作『The Slaughter Rule』(アレックス・スミス、アンドリュー・J・スミス)ではふしぎなことに顔までそっくりだ。

 さらに、『ブルーバレンタイン』のゴズリングの役名は「ディーン」だし(といってもファーストネームだが)、同じデレク・シアンフランス監督の『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ』(2012)でも、赤いジャケットを着て、ディーンのようにバイクを飛ばし、スピードに取りつかれたように犯罪に走り、加速し、相棒にも愛想をつかされてこう言われる。「稲妻のように走り、雷のように死にたいか?」。作品のたった3分の1を過ぎた頃に彼は死んで、にもかかわらず彼の記憶は最後まで恋人のように私たちの心に残り続ける。

 「百歳まで生きても、まだ自分がやりたいことを全部やる時間はないだろう」──ディーンはこう言っていたという。ディーンがやり残したたくさんの仕事を、ゴズリングがこれから様々な作品で一つずつ実現していってくれる。彼はそういうスターなのだ。

■田村千穂
1970年生まれ。映画批評・研究。著書に『マリリン・モンローと原節子』(筑摩選書)、『日本映画は生きている』第5巻(岩波書店、共著)。2017年度は中央大学にて映画の授業を担当。

■公開情報
『ラ・ラ・ランド』
TOHOシネマズ みゆき座ほか全国公開中
監督・脚本:デイミアン・チャゼル
出演:ライアン・ゴズリング、エマ・ストーン、J・K・シモンズ
提供:ポニーキャニオン/ギャガ
配給:ギャガ/ポニーキャニオン
(c)2017 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.
Photo credit: EW0001: Sebastian (Ryan Gosling) and Mia (Emma Stone) in LA LA LAND.Photo courtesy of Lionsgate.
公式サイト:http://gaga.ne.jp/lalaland/

関連記事